第4回ではCRO(コンバージョンレート最適化)の大きな課題である「サイト離脱」を防ぐ方法について、データで見るべきポイントや改善を手掛ける順番を5つのステップにまとめた。筆者が改善を支援したECサイトの事例を基に、実際に取り組んだ改善策を含めて徹底解説する。同サイトはトップページの離脱率が70%を超えていたが、改善策によって半減させた。サイトの離脱率が高く、CVR(コンバージョン率)の向上に悩む企業に参考になるはずだ。

集客しても、サイトの離脱率が高くては広告効果は上がらない。「サイト離脱」を低減させるための手法について、サイトの課題点を浮き彫りにするデータの分析から具体的な改善策を5つのステップで解説する(写真/Shutterstock)
集客しても、サイトの離脱率が高くては広告効果は上がらない。「サイト離脱」を低減させるための手法について、サイトの課題点を浮き彫りにするデータの分析から具体的な改善策を5つのステップで解説する(写真/Shutterstock)

 CROを支援した企業は化粧品、アパレル、雑貨などを扱うECサイトの運営会社だ。「なかなか売り上げが上がらず、伸び悩んでいる」という相談を受け、現状の分析から始めた。離脱率改善の第1ステップはアクセス解析ツール「Google Analytics」のデータを用いた「現状の数字と売り上げ目標の把握」だ。それらを把握することで、CVR(コンバージョン率)の改善目標が見えてくるからだ。

 下図を右から見ていこう。まず、CPC(クリック単価)は、広告の1クリック当たりのコストを表している。1人の見込み客をサイトに集客するのにかかったコストと言い換えてもいいだろう。もしCPCが100円でCVRが1%だった場合、CPA(顧客獲得単価)は1万円。したがって、100万円の広告費で獲得できる新規顧客の数は100人になる。

売り上げは顧客数、顧客の購入単価、購入頻度に分解できる。これらの数値をさらに細分化することで、CVR(コンバージョン率)の改善目標が見えてくる
売り上げは顧客数、購入単価、購入頻度に分解できる。これらの数値をさらに細分化することで、CVR(コンバージョン率)の改善目標が見えてくる

 新規顧客数と既存顧客数を合算すれば顧客の全体数になり、これに顧客の購入単価と購入頻度を掛け合わせることで売り上げが算出される。ちなみに、定期通販や定期サービスの事業モデルの場合、購入頻度ではなく継続期間で算出するといいだろう。この掛け算で明らかなように、売り上げを上げるためには、顧客の購入単価、購入頻度、新規顧客の獲得という3つの数値の向上が重要である。このうち新規顧客の獲得数については、CROによって直接的に改善できる。

 新規顧客獲得数を向上させるために重要なCRO施策がサイト離脱の防止である。支援先のECサイトにおいてもサイト離脱の割合が大きく、CVRが上がらない原因になっていた。穴の空いたバケツに水を注いでいる状態である。では、そもそもサイト離脱はなぜ起こるのだろうか。

 消費者がサイトに訪れるきっかけになっているのは、検索やSNS、広告といった導線である。これらの導線ごとによく見られる離脱の要因を紹介しておこう。まず、検索経由の訪問者は、何かしらの情報を求めて、自ら能動的に行動を起こしているモチベーションの高い層である。そのため、サイトから離脱しにくく、CVRも高い傾向にある。こうした訪問者の離脱は「サイトに必要な情報や商品がなかった」「サイトの内容がイメージにそぐわなかった」など、期待している情報とサイト内の情報との乖離(かいり)であることが多い。

 次に、SNSや広告経由の訪問者は、情報に対して受動的に触れてから行動を起こしているモチベーションの低い層である。こうした層は離脱しやすく、CVRも低い傾向にある。離脱の要因としては、「サイトが使いづらくてどこを見ればよいか分からない」「サイトの読み込みが遅くて待っていられない」といった、サイト構造の問題であることが多い。顧客の消費行動を基に、最適なサイト設計が求められるだろう。

サイト離脱を防ぐために確認すべき、3つのページと指標

 このような大まかな傾向を理解したうえで、いよいよ具体的な改善に入っていこう。サイト離脱改善の2つ目のステップは「重要な指標の把握」だ。Google Analyticsで以下の3つの指標を確認してほしい。「(1)ランディングページ(LP)とトップページの直帰率」「(2)PV(ページビュー)数の多いページの離脱率」「(3)商品ページの離脱率」だ。支援先のECサイトの例を通じて、順番に説明していく。

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