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D2C企業と探る、BX(ブランド体験)の可能性

「着用感がわかる安心で購買を後押し」ファッションブランド「COHINA」が小柄女性に愛される理由

 Webが生活の一部になったことで消費者の興味・関心は細分化され、単一のメッセージを広く発信するだけでは消費者を動かすのが難しくなってきた。この状況でマーケティングの課題を解決し、売上拡大に必要な概念「BX(Brand Experience:ブランド体験)」をテーマに、wevnal代表の磯山氏が各社の考え方や取り組みを伺う本連載。第7回は身長150cm前後の小柄女性向けファッションブランド「COHINA」のディレクター田中絢子氏に話を聞く。

「どうせ私には着られない」と諦めてほしくない

磯山:COHINAさんは、150cm前後の女性向けファッションブランドです。創業のきっかけはなんだったんですか?

田中:私自身の身長が148cmで、ぴったりな服がなくて困っていたんです。今でこそ小柄女性向けのブランドも増えてきましたが、2018年の創業当初は本当に少なかった。

 もちろん、着られる服はあります。たとえば、キッズ服であれば着られるサイズの服があります。ただ、大人の女性としてキッズ服を着てる自分は、なんだか恥ずかしいなと感じてしまいますよね……。

 また、「小柄さんと言えばフリルやピンク系を着ておけばいい」というような固定観念が見え隠れすることに、違和感を覚えていました。そうではなく、20代中盤くらいの女性がリアルに着ている服を作らないといけないと思ったのが創業のきっかけです。

COHINA 代表/ディレクター 田中 絢子氏
COHINA 代表/ディレクター 田中 絢子氏

磯山:大きいサイズの専門店は見かけますが、小柄さんに特化したブランドは少ないんですね。

田中:ブランドを立ち上げるにあたって、ショッピングセンターに足を運んで市場調査も行いました。しかし、ちょうど良いサイズ感で着られる洋服は、全体の3%ほどでした。

 大柄な人が普通サイズの服を着ようと思っても、物理的に入りません。そのため明確にニーズがあるし、市場として成り立ちます。一方、小柄さんはお直しをしたり七分丈を選んだりの工夫で、普通サイズの服を着ようと思えば着られます。当事者以外からすれば「がんばればどうにかできる課題」なので、ニーズが可視化されづらかったのだと思います。

磯山:それでも「工夫すればなんとか着られる」と「ぴったりサイズが合って似合う」では大きく違いますもんね。

田中:世の中ではこんな服が流行っていると聞いても「どうせ私には着られないから関係ない」という諦めを持っていました。COHINAというブランドを通して「そんなことないよ、あなたにも陽が当たって、なりたい自分になれるんだよ」と伝えたいですね。

磯山:「あなたに陽が当たる服」がCOHINAのブランドコンセプトですよね。

田中:「COHINA」というブランド名は「小柄女性の日向」に由来しています。同じ悩みを持った者同士でつながり合って寄り添って、柔らかく包み込めるようなブランドにしたくて、温かさを感じられる日向という言葉を選びました。

着用感がわかる安心で購買を後押し

磯山:創業当初から、Instagramのライブ配信を活用した情報発信に力を入れていらっしゃいますよね。それはなぜでしょうか?

田中:アパレルを始める場合、一番多いのは実店舗を構えたり、大手ECモールに出店したりすることではないでしょうか。ただ、私たちはお金もノウハウもありませんでしたし、いきなりECモールに出店しても私たちの魅力を伝える前に埋もれてしまいます。まずは、自分たちが何者で、何を思ってどういう服を作っているのかを、興味を持ってくれる人たちに確実に伝える手段としてInstagramを選びました。

磯山:ライブ配信をする際に意識していることはありますか。

田中:小柄さんは今まで買い物で散々苦労してきて、ましてや実物を見ないで買うことに不安が大きいと思っています。そのため、リアリティを伝えて徹底的に安心してもらうことを意識しています。

 普段は15人くらいのライバー(配信者)さんが日替わりでライブ配信をしています。たとえば、私は148cmだから148cmの人の着用感を知りたいなど、自分と似た体型のライバーさんが実際に着ているのを見て、着用感をチェックしてもらっています。

 また、着用感だけでなく、どのような生活シーンに合うのかも伝えています。たとえば、子育て中のママさんの感想をシェアしたことで、安心して購入できたという声もいただいています。

磯山:モデルさんの画像を見ただけでは、自分に合う洋服かわかりにくいですからね。自分と似た身長・体型のライバーさんを見るとぐっとイメージが湧きますよね。

田中:商品ページに置いてあるだけではなかなか売れない商品も、ライブ配信で紹介すると魅力に気づいてもらえることがあります。ライブ配信では毎回固有のクーポンを発行し、そのクーポンが使われた回数で効果測定をしているので、ライブ配信の内容と売れ筋の関係性もある程度見えてきました。

磯山:毎日ライブ配信を続けるのは大変だと思いますが、心が折れることはなかったんですか?

田中:ありました。配信者2人に対して、視聴者が1人ということもありました。

 ただ、ライブ配信を1回見て興味がなかったとしても、何回か見るうちに意識し始めてもらえることもあります。触れる頻度が高くなることで、だんだん好感度が増していく。どうやってお金をかけずにファンを増やしていけるか、試行錯誤した積み重ねによって今があるんだと思います。

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この記事の著者

磯山 博文(イソヤマ ヒロブミ)

株式会社wevnal 代表取締役 2008年大手インターネット企業に新卒で入社し、メディアレップ事業、新規事業開発に携わる。2011年4月に株式会社 wevnal を創業し、LTV最大化を実現するBXプラットフォーム「BOTCHAN」を展開。累計導入社数は600社を超える。 12期目を迎えた2021...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/04/10 08:00 https://markezine.jp/article/detail/41828

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