2023年3月28日に、大盛況の中開催されたオンラインイベント「D2C HACK DAY」。
イベントを聞き逃してしまった方や、もう一度内容を見返したい!という皆様にお声をいただき、レポートとしてまとめました。
イベントの中盤に当たるSession3では、「インフルエンサー×Instagram攻略、今勢いのあるD2C企業2社の新規獲得戦略」と題しセッションを実施いたしました。
登壇者紹介
成松 巧光 氏
株式会社ファストノット
2018年に大手システムベンダーに新卒入社し、システム導入や業務改善の提案を行うコンサル事業に携わる。その後、総合コンサルファームに転職し、クライアントのサプライチェーン領域のDXを支援。2021年12月に株式会社ファストノットに入社し、マーケターに転身。着圧ウェアブランド『ベルミス』を中心に新商品の開発や広告運用、オフラインでの商品展開など幅広いマーケティング業務を担当している。
森永 遼 氏
DINETTE株式会社
1996年福岡生まれ。学生時代から個人事業として受託制作を経験し、営業代行会社、アフィリエイトASPを経て、2021年5月にDINETTEに入社。コスメブランド「PHOEBE BEAUTY UP(フィービービューティーアップ)」の新規獲得を担当。データ分析、CVR改善、代理店折衝などの多くの実務に従事している。
モデレーター:森元 昭博
株式会社wevnal / 執行役員CRO
目次
テーマ1:なぜ今、Instagramなのか
wevnal 森元昭博(以下、森元):
今回のセッションは、「インフルエンサー×Instagramの攻略」というテーマを掲げております。
両ブランドともInstagramをうまく活用されている会社様ですので、深くお話を聞ければと思っています。
まずは釈迦に説法のようですが、まずは主要SNSの概要についてシェアさせてください。
ガイアックス社のデータによるとTwitter、Instagram、Facebookの月間アクティブユーザー数は、LINEに次いで多いです。Instagramに絞っていうと、なんと月間3300万人が利用しています。
次に利用者の年齢層に関して、LINEは10代から70代まで幅広く、Facebookは高めです。しかし、TwitterとInstagramは、10代から30代が主となっています。
こちらを踏まえて、Instagramがなぜ注目されているのか、まずはファストノット社の成松さんにお聞きします。
ファストノット 成松巧光氏(以下、成松氏):
簡潔に答えるならば、Instagramは憧れの強いSNSだから、ですね。
InstagramはTwitterやTikTokと比較しても、ユーザーのライフスタイルが色濃く反映されています。そのため、Instagramでフォローしている人の投稿を見たときに、「このお店に行ってみたい」「この人のファッションを真似してみたい」という憧れの感情が生まれやすいと考えられます。したがって、Instagramを活用することで、認知の拡大だけでなくこの人が使っているからこそ、この商品を試してみたいという強い権威付けにつながると思っています。
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森元:
なるほど。DINETTE社の森永さんは、この点についてどうお考えですか?
DINETTE 森永遼氏(以下、森永氏):
そうですね。現在のInstagramは、4つの大きな役割を果たしていると考えています。
1つ目は、1人が多数の人に向けて自己表現を行うためのプラットフォームとしての役割。
2つ目は、他人の投稿を楽しんだりして時間を消費する役割。
3つ目は、商品の情報収集や購入のために活用することができる役割。
そして最後に、1対1のコミュニケーションを含んだSNSとしての役割です。
以前は若者の間でも「LINEで連絡して」と言われていたことが、最近では「インスタでDMして」という形になってきているなどの変化もみられます。つまり、今までスマホの中で複数のアプリを横断的に行われていたことが、インスタの中で完結しつつあるようになってきているんです。
今後Instagramはユーザーがスマホを使っている時間の大部分をますます占めていくようになるのではないかと思うので、今注力すべきではと考えています。
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森元:
なるほど。ありがとうございます!
お二人にお聞きしたいのですが、事業開始の最初のタイミングからInstagramに注力することを決めていたのでしょうか?
森永氏:
当社の代表である尾崎が、美容メディアをInstagramで始めたことが最初のきっかけです。その後もInstagramは主軸として施策を行っています。
成松氏:
私たちも最初からInstagramに注力していました。しかし、TwitterやTikTokでもPRを行っており、その中でもInstagramでの獲得が伸びていることから、より注力するようになった背景があります。
テーマ2:インフルエンサーマーケティング
森元:
次に「インフルエンサーの攻略方法」についてお話ししたいと思っています。インフルエンサーの方々に興味を持ってもらい、実際に取り上げていただくためにはどうしたら良いのでしょうか?
このトピックは本記事を読んでいただいている皆さまも気になると思いますし、まずはインフルエンサーに取り上げてもらわなければ何もできません。そこで、具体的なTipsがあれば聞かせてください。
森永氏:
インフルエンサーさんの広告枠の総量は固定値と考えることが重要だと思います。
まず、インフルエンサーさん1アカウントあたりのPR投稿枠が大幅に増えることはありません。
仕組み的にインフルエンサーさんは自らの発信投稿の間にPR投稿を挟みます。一般論として消費者はPR投稿が多すぎるインフルエンサーさんを嫌う傾向にあり、PR投稿の多さはフォロー解除の原因となることがあるので、一定数以上のPR投稿はリスクがあります。そのため、1アカウントあたりのPR枠数が一定数以上は増えないと考えています。また、多くのフォロワーを持つアカウントを新しく育成するには時間がかかるため、広告枠の総量が急速に増えていくことは考えづらいですね。
このような広告枠が増えない状況下で、枠を使いたいという事業者が増えているので、様々な業種の事業者が枠を奪い合うという構図になってしまっています。自社の直接的な競合事業者のPR状況だけを見て同じような動きをしているのでは、インフルエンサーに取り上げてもらうことは難しいでしょう。
ここを打開するには、インフルエンサーさんとPRを行っている事業者を商品を問わず調べ、動向の洗い出しが必要です。その上で、いつそのインフルエンサーにアタックするべきかや交渉のタイミングなどを見極めるのが良いと思っています。単に「PRお願いします」と頼み事をしているだけでは、成果が出ないこともありえます。
このように考えると、今日一緒にお話ししているファストノットさんは実は僕らの競合さんになっちゃうんですよね。
森元:
確かにユーザー属性が似ていますよね。
森永氏:
はい。そうですね。
極力避けたいんですが、有名な事業者さんとキャンペーン日程が被ってしまったときは反応率も正直悪かったりします。
森元:
ファストノットさんはいかがでしょうか。
成松氏:
SNSを活用したインフルエンサー施策を成功させるには、インフルエンサーさん本人に「いかに自社の商品を投稿したいと思ってもらうか」が大切だと考えています。
最近のインフルエンサーさんは、より自身のブランディングを重要視している傾向にあります。そのため、たとえ企業から依頼があった場合でも、自分の納得できる商品でなければPRしないというケースも多いです。
また、先ほど森永さんも仰っていたようにインフルエンサーさんがPRできる商品の数にも限りがあります。自分のフォローしている方がPR投稿ばかりしていると「本当に良いと思った商品を紹介してるの?」と信頼がなくなり、インフルエンサーさん自身のブランディングが崩れる可能性もありますよね。だからこそ、限られたPR投稿枠の中で「いかに自社の商品を投稿したいと思ってもらうか」が大切なんです。
その上で、インフルエンサーさんに自社の商品を選んでもらうには、2つのポイントが重要だと考えています。1つ目は商品自体に投稿映えしそうな特徴があることです。例えばモコモコに泡立つ洗顔のように視覚優位性があったり、飲んだら30分後にトイレに行きたくなるような分かりやすい効果があるイメージですね。
2つ目は投稿しやすい話題作りを継続して行うことです。いつも同じ商品、同じ見せ方で投稿し続けるとフォロワーも飽きてしまいインプレッションの低下に繋がってしまいます。そのため、企業側から新しいネタを提供できなければ他商品のPRにリプレイスされてしまうこともあります。例えばテレビCMを放送したり、販売実績○○万枚突破しましたという情報をインフルエンサーさんに提供するのもいいかもしれませんね。
常に「どうすればインフルエンサーさんがPRしやすいのか」という目線で施策を練り、コミュニケーションをとることが大切です。
森元:
なるほど、その部分はすごく興味深いです。
森永さんは、これらのポイントを意識してインフルエンサーさんとやり取りをされているのでしょうか?
森永氏:
はい、そうですね。
PR代理店さんとのやり取りでも、成松さんと同じようなポイントを伝えているため、森元さんがおっしゃる通り、非常に重要だと思います。
森元:
ちなみに、実際にインフルエンサーマーケティングを行う上で、社内でどのようなKPI(重要業績評価指標)を設定しているのですか。例えば、シェア率やいいね数などでしょうか。
成松氏:
私が把握している範囲だと投稿数ですね。実施したキャンペーンの投稿数がどのくらいだったのか、過去のキャンペーンと比較してどうだったのかを確認しています。インフルエンサーさんの反応が良かった点、悪かった点をヒアリングすることで今後の施策検討にも役立てています。
森永氏:
社内での施策評価としては、投稿されたことによって指名検索やオーガニックにどの程度影響しているかというアトリビューションを見ています。
森元:
なるほど。
読者の方の中には、インフルエンサーマーケティングがちょっとまだ見えないという方もいるかもしれません。
登壇していただいているお二方とも、インフルエンサーマーケティングについては熟知されていると思いますが、もし最初に始めるとしたら鉄板の施策やお勧めの動き方などがあれば教えていただきたいです。
森永氏:
私たちは直接インフルエンサーさんに依頼するのではなく代理店を通して依頼しています。協業する代理店さんを選定する際には、「理論的に納得できる説明ができるご担当者さん」を見つけることが重要だと思います。疑問や施策について一緒に話し合い、ボトルネックがぼやけないよう施策を進めていくことが大切です。
森元:
成松さんはいかがでしょうか。
成松氏:
インフルエンサーマーケが成功するか否かは、商品開発の段階から勝負が始まっています。商品開発のために市場のニーズや競合他社の分析を行うのはもちろんですが、インフルエンサー市場を理解することも大切です。
そのため、商品開発の段階からSNSの投稿を分析したり、インフルエンサーさんの意見をヒアリングして商品設計を考えるのがいいと思います。
テーマ3:「Instagram LPのポイント」
森元:
ありがとうございます。最後のテーマは、「Instagram LPのポイント」についてです。一般的に、投稿から購入に至る経路は「ランディングページ(LP)を通じて購入」という流れになっています。
しかし、LPにもブランドの統一感が必要で、それがない場合は不信感を与えてしまう恐れがあります。そこで、LPの使い方やポイント、そして世界観の作り方についてお話しいただけますか?
成松氏:
はい。私たちはLP制作の際に、LPを見たお客様が商品を購入した先の自分をイメージできるようなデザインにすることを心掛けています。冒頭でもお話したように、Instagramでは「私もこんな人になりたい」「こんなライフスタイルを送ってみたい」といった憧れから商品に興味を持つ人が多いです。だからこそ、機能的な価値だけでなく情緒的な価値を訴求することで、商品を購入した先の自分をイメージしてワクワクするようなLPをデザイン会社さんと協力して制作しています。
森元:
ベルミスさんのLPは、商品をイメージしやすくしていて、女性なら買ってみたくなるようなデザインで印象的でした。
成松氏:
ありがとうございます。商品に興味を持ってもらうだけでなく、商品を使って悩みを解決することで日々の生活をより良いものにしていただきたいという思いも込めています。
森永氏:
ブランドメッセージとして私たちが伝えたいのは、「BE ME」です。誰かになるのではなく、自分がなりたい姿になろうということを後押ししたいという意図からです。そのため、固定概念を伝えるようなLPを作らず、細かい表現にもこだわっています。世界観を壊さないように守っていくためには、小さな積み重ねが大切だと思っています。
森元:
そのような意識を持つようになった理由があればぜひ教えてください!
森永氏:
「私たちが伝えたいことは何か」を考えるようになったことです。
獲得広告を行う際にはネガティブな表現やコンプレックスを過剰に煽るような表現が効果的だとされていますが、それではブランドのメッセージとズレてしまうことがあります。
新規獲得に必要な訴求表現ではもちろんあるものの、ブランドとして発信するコンテンツがブレているとどこかで違和感を与えてしまいお客様の離脱に繋がってしまうかもしれないので、気をつけるようにしています。
普段のABテストをやる中で小さな積み重ねの重要性に気づき、広告全体で見たときに違和感が積み重なっていないかを考えるようになったことがきっかけですね。
日々の業務においては、そのようなことに注意を払っています。
森元:
ありがとうございます。
「商品に関する質問が直接インフルエンサーに届くこともあると思いますがどう対処されていますか」という質問が来ているのですが、その部分のコントロールについてお聞かせいただけますか?
成松氏:
確かに、インフルエンサーさんへの質問や問い合わせは一定数ありますし、それらを全てコントロールすることは難しいですね。例えば、使用方法やサイズ選びなどの問い合わせが多いのですが、実際にPRを依頼する際に商品を提供しているので、回答できる範囲で返信をしてもらっています。それでもわからない場合や、イレギュラーな問い合わせがある場合は代理店さんを通じて弊社にご質問をいただいています。
森元:
ありがとうございます。
もうひとつ質問です。「インスタからの売上インパクトが出始めたのは、フォロワー数やUGC数などがどの程度いったタイミングでしたか?」という質問ですが、いかがでしょうか?
森永氏:
正直に言うと、フォロワーやUGC=売上というわけでないかなと…。最初に戦略立てを行い、Instagram広告とインフルエンサーさんのPRを駆使すればブランドアカウントのフォロワー数が多いかどうかはあまり関係ないと思います。
成松氏:
私も森永さんと同じですね。一般のお客様が投稿してくれたUGCやその他の投稿を調べて、商品を知ることはブランドや商品の信頼度や「試したい」という気持ちに繋がるとは思います。しかし、あくまでお客様が購入の意思決定をする要素の1つでしかないので、明確に何件のUGCがあるから売上が伸びるといったような指標を設けるのは難しいですね。
森元:
つまり、明確な数値やタイミングを決めずに、まずはスタートしていくことが重要だということですね。
僕としても知らない部分が多く、とても勉強になりました。ありがとうございました!
最後に、皆さんそれぞれコメントをいただけますと幸いです。
成松氏:
はい。
現状、商品のサイズやカラー展開が増えてきて、結果としてSKUが増加しているため、購入時の選択肢が増えてLPの離脱に繋がる要因になっています。そこで入力フォームの最適化によりユーザーのストレスを軽減できる点において、「BOTCHAN」は必要不可欠な存在となっています。今後は、新しい決済手段の導入や外部連携の強化で、より円滑に商品を購入できるように、一緒にシナリオ設計を作り上げていきたいと考えています。
森永氏:
そうですね。今回の「BOTCHAN」主催のトークセッションでこれを公に言っていいのかどうか悩みますが、正直に言うとチャット形式のツールにおける各社の機能差はどんどん小さくなっていると感じています。そうなってくると、ツールの選定基準はその会社の「対応力」によって決まるのではないでしょうか。その点「BOTCHAN」さんはCSのご担当者さんのリテラシーが非常に高く、社内のエンジニアとも連携が取れているのでスムーズに依頼が進んでありがたいです。
森元:
ありがとうございます。「BOTCHAN」をただのツールで終わらせず、今後もお客様の売り上げ向上やLTV向上にコミットし続けたいと思っています。両社様とも、今後とも引き続きお付き合いいただければ嬉しく思います。今回のセッション3は以上で終わります。皆様、ありがとうございました!
成松氏・森永氏:
ありがとうございました!