GA4(Google アナリティクス4 プロパティ)は、2020年にリリースされたGoogleによる最新版のアクセス解析ツールです。
この中にある「エンゲージメント」という指標をご存じですか?
「エンゲージメント」とは、これまでのGoogleアナリティクスの「直帰率」や「離脱率」などに変わる、ユーザーの満足度を測る新たな指標として注目を集めています。
そこで今回の記事では、以下の点についてご紹介します。
・エンゲージメントとは?
・分析のメリット
・具体的な分析例
・数値向上のポイント
エンゲージメントを正しく理解すると、これまで見えてこなかったユーザーの情報が簡単に分かるようになります。効果的に活用し、マーケティングの質を高めていきましょう。
目次
エンゲージメントはGA4における重要指標
エンゲージメントとは、これまでのGoogleアナリティクスにはなかった新たな指標です。
ここではまず、その概要について見ていきましょう。
エンゲージメントの定義
アナリティクスヘルプを見てみると、以下のような説明がされています。
「エンゲージメントとは、サイトやアプリに対するユーザー操作」
つまり、サイト内でユーザーが起こした何らかのアクション(イベント)のことを指すのです。
同じく、アナリティクスヘルプには例として、
・コンテンツ配信:ページを下方向へゆっくりスクロールする
・eコマースサイト:商品の詳細ページを閲覧する、特定のページに一定時間留まる
・オンラインバンキングアプリ:口座の残高確認
・大学のサイト:情報動画の視聴
が挙げられています。
参考URL:https://support.google.com/analytics/answer/9355853?hl=ja
参考URL:https://support.google.com/analytics/answer/10999789?hl=ja
SNSにおけるエンゲージメントとの違い
エンゲージメントという用語はSNSの世界でも使われますが、GA4での意味とは少し異なります。
SNSではユーザーの興味の度合いに対する指標として活用されています。たとえば、「いいね!ボタンを押す」「コメントを残す」「シェアする」「クリックする」などと定義されています。
一方、GA4ではWebサイトやアプリ上で起きる全てのアクションが、エンゲージメントとして収集されます。
エンゲージメントに関わるその他の指標
GA4では、エンゲージメントを利用して、いくつかの指標を確認することが可能です。
ここでは、以下の4つの指標をご紹介します。
・セッション
・エンゲージメントセッション数
・ユーザーエンゲージメント
・アクティブユーザー
・平均エンゲージメント時間
では順番に見ていきましょう。
セッション
セッションとは、Webサイトやアプリでユーザーが何らかの操作を行っている時間のことです。GA4では、セッション開始時に「session_start」のイベントとして計測されます。
開始の条件は以下の通りです。
・現在アクティブなセッションがない状態でWebサイトのページか表示されたとき
・アプリがフォアグラウンドで開かれたとき
終了の条件は、何もイベントが発生しないまま30分以上経過したときとされていますが、Web、アプリともこの時間の長さは調節可能です。
なお、「session_start」はデフォルトで用意されており、新たに設定する必要はありません。
エンゲージメントセッション数
エンゲージメントセッション数とは、一定の条件を満たしたセッション数のことです。
アナリティクスヘルプによると、以下のいずれかの条件に当てはまることが必要と記されています。
・セッションが10秒以上計測したとき
・セッション内でコンバージョン(成約)イベントが1件以上発生したとき
・セッション中で2回以上の閲覧、視聴が発生したとき
つまり、全セッションの中でエンゲージメントに結びついた数ともいえるでしょう。
ユーザーエンゲージメント
ユーザーエンゲージメントとは、Webページがフォーカスされている時間、もしくはアプリがフォアグラウンドで動作している時間の長さのことです。つまり、この指標をチェックすると、ユーザーがどのくらいの時間コンテンツを使用したかが分かります。
ユーザーがページやスクリーンを離れると、「user_engagement」のイベントとして収集されます。また、ユーザーエンゲージメントは、セッションがエンゲージメントセッションでなくてもイベントとしてカウントされます。
アクティブユーザー
一般的にアクティブユーザーとは、Webサイト、アプリにアクセスしたユーザーのことです。
GA4の場合、以下の条件でアクティブユーザーであると認識されます。
・エンゲージメントセッションが発生したとき
・Webサイトのfirst_visitイベントまたはengagement_time_msecパラメータが収集されたとき
・Android、iOSアプリのfirst_visitイベントまたはengagement_time_msecパラメータが収集されたとき
平均エンゲージメント時間
平均エンゲージメント時間とは、ユーザー1人あたりが平均してどのくらいの時間エンゲージメントがあったかを表すもので、以下の算出式で確認できます。
総ユーザーエンゲージメント÷アクティブユーザー数
また、1セッションあたり平均してどのくらいのエンゲージメント時間があったかについても表示可能です。
この場合の算出式は、
総ユーザーエンゲージメント÷セッション数
で出されています。
GA4でエンゲージメントが重視される背景
ではなぜ、GA4ではエンゲージメントが重視されるようになったのでしょうか。
それには、
・アプリの急速な普及
・「直帰率」の曖昧さ
の2点が理由として考えられます。
アプリの急速な普及<
Webサイトと同様に、近年多くの企業が取り入れているアプリの急速な普及は、エンゲージメントの重要性を高めた要因のひとつです。
これまでのGoogleアナリティクスでは、主にWebサイトの分析を目的としていたため、重要とされていた指標のほとんどが「ページビュー」を軸としたものでした。
しかし、こうしたアプリの普及に伴って、Webサイトとアプリを横断的に分析する必要性が高まってきたのです。
アプリにはページという概念が存在しません。そのため、GA4では従来使われてきた「ページビュー」から、「イベント」を軸とした計測を行うようになりました。
こうした理由から、エンゲージメントが指標として重要視されているのです。
「直帰率」と「滞在時間」の曖昧さ
アプリの急速な普及は、これまでのGoogleアナリティクスで重要とされていた、いくつかの指標に影響を与えました。その代表的なものが「直帰率」と「滞在時間」です。
「直帰率」とは、Webサイトに訪れたユーザーのうち、サイト内の別ページに移動することなく離脱していったユーザーの割合のことです。
従来の分析では直帰率が高い場合、ユーザーのニーズとページのコンテンツにズレがあると考え、基本的に下げる方向で改善するものとされていました。
しかし、最初のページから直帰したユーザーがサイトに満足していないかというと、そうとも限らないのです。
たとえば、ページの内容が悩みを完全に解決するものだった場合、他のページに移動することなく離脱するでしょう。Webサイトからアプリへ移った場合も、直帰と考えるには違和感があります。
また、「滞在時間」にも同じく曖昧な部分がありました。滞在時間とは、そのページやサイトにユーザーがどのくらいとどまったかの時間の長さを表す指標です。滞在時間はそのページの閲覧開始時間と、次のページの閲覧開始時間の差を利用して算出されていました。
しかし、直帰や離脱をしたページは次のページの閲覧開始時間が分からないので、計測不能となっていたのです。そのため、分析者はユーザーが最終ページにどのくらい滞在して何をしていたかを知ることは不可能だったのです。
<sこれらの場合、今まではページの性格やコンテンツ内容、その他の指標を踏まえて分析者が独自に解釈する必要がありました。
エンゲージメントを指標とすると、ユーザーの実際の動きを追って分析できます。また、これまで予想するしかなかった最終的な行動を把握できるので、より正確な行動分析が可能となったのです。
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エンゲージメント分析のメリット
エンゲージメントを分析することのメリットは以下の3つです。
・Webとアプリの両方が分析できる
・ユーザーの行動が深く理解できる
・ユーザーの予測分析ができる
Webとアプリ両方の分析ができる
これまでGoogleアナリティクスは、Webサイトの分析に特化していました。アプリの分析をするためには、Firebaseを使用しなければならず、分析量によっては別途料金が発生することもあったのです。
しかし、GA4では実装でアプリのエンゲージメントも分析できます。前述の通り、アプリの普及が進む現在において、この機能改善は最大のメリットと言えます。
ユーザーの行動を深く理解できる
エンゲージメントを分析すると、ユーザーがWebサイトやアプリ内でどのように動いたかが最初から最後まで分かります。ひとつひとつの指標を個別に分析するのではなく、ユーザーの行動を流れとして俯瞰できるので、特徴や傾向に加えユーザーの心理状態も把握できるのです。
そのため、ユーザー理解を深め、より効果的にマーケティングに活かせます。
ユーザーの予測分析ができる
GA4では、エンゲージメントを分析することでユーザーの予測分析が可能になります。
具体的には、
・CV(Conversion:成約)確率
・収益予測
・解約確率
などの予測分析です。
これらの数値を分析することで、CVに繋がりやすいユーザーの傾向が分かるため、CV数向上の施策も立てやすくなります。
GA4のエンゲージメントを活用した分析例
では、実際にエンゲージメントを利用した分析方法を見ていきましょう。
ここでは活用頻度が高いと予想される、以下の3パターンの方法をご紹介します。
・ページごとの利用ユーザー数とエンゲージメントの分析
・ユーザー維持率の分析
・CV状況の分析
GA4のエンゲージメントを利用した分析はさまざまですが、まずは基本的なものから押さえていきましょう。
また、ここではダッシュボードで数値を簡単に確認する方法をご紹介しますが、より詳しい分析を行いたい場合は「分析」機能を利用する方法もあります。
ページごとの利用ユーザー数とエンゲージメントの分析
画面左側のダッシュボードより、「エンゲージメント>ページとスクリーン」を選択しましょう。
この数値を分析することで、ユーザー数に対してどのくらいエンゲージメントがあるかが分かります。また、「1-エンゲージメント率」で、およその直帰率を算出することも可能です。
ユーザー維持率の分析
画面左側のダッシュボードより、「ホーム>ユーザー維持率」または、「維持率>概要」を選択することで確認できます。
維持率を高めれば、エンゲージメントが向上しCVにも繋がりやすくなります。ぜひ定期的なチェックをおすすめします。
CV状況の分析
画面左側のダッシュボードより、「エンゲージメント>コンバージョン」で確認できます。
コンバージョンイベントは自動的に収集されるものもありますが、その他にもカスタムすることも可能です。
エンゲージメントはUX向上のひとつの指標として見る
エンゲージメントに関する指標を分析するとき、適正な数値はどのくらいか迷ってしまうかもしれません。
しかし、まだ新しい指標であるため、それぞれの具体的な目安ははっきりと分かっていません。
エンゲージメントは長期的に計測し、自社にあった指標の目安を見つけていくのがよいでしょう。その際、重要になってくるのが、UX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス)の観点です。
ここでは、
・UXとは何か?
・UXに関連付けたエンゲージメントの捉え方
>について解説します。エンゲージメントとUXの関係性を理解することで、効果的な施策を講じられるようになります。
UXとは
UXとは、User Experience(ユーザーエクスペリエンス)の略で、日本語では「顧客体験」と訳されます。UXは商品やサービスを通じてユーザーが経験した、驚きや感動などの全ての体験のことを指します。
UXを向上させることは、顧客満足度の改善やリピーター獲得にも繋がります。そのため、企業成長や安定的な経営を続けるため欠かせない指標として、近年マーケティングに活用される場面が増えています。
UXに関連付けたエンゲージメントの捉え方
エンゲージメントを分析・活用する上で、「エンゲージメントはUX向上という目的に対する指標のひとつである」という視点を持っておくことは重要です。
時間の長さやセッション数にのみに注目し、むやみに数値を伸ばそうとすると、サイトやアプリ本来の目的やユーザーのニーズからかけ離れてしまいます。その結果、ユーザー離れの原因にもなりかねません。
コンテンツの改善を行う場合にはデータを把握する一方で、アンケートやコミュニケーションによってUX向上に貢献できているかも、定期的に確認しましょう。
エンゲージメントを高める4つの改善策
最後に、エンゲージメントに関わる指標を向上させるための施策をご紹介します。
よりユーザーの満足度を高めるためのアイデアとして、ぜひご活用ください。
・動画や画像を使ってビジュアルの質を上げる
・Webサイトの読み込み速度を上げる
・カスタマージャーニーに沿ったレイアウトにする
・UX向上に役立つツールを活用する
では、順番に見ていきましょう。
動画や画像を使ってビジュアルの質を上げる
動画や画像を効果的に使ってビジュアルの質を上げることは、ユーザーの興味を引きエンゲージメントを高めるために有用です。
特に動画はユーザーの視線の動きを止め、視覚的にメッセージを理解してもらいやすいのでCVにも繋がりやすくおすすめです。
Webサイトの読み込み速度を改善する
Webサイトの読み込み速度を上げるのも、エンゲージメント改善には効果的です。
ユーザーは思った以上にせっかちです。もし「読み込み速度が遅い」と感じれば、たちまちサイトを去ってしまうでしょう。
前述のビジュアルの質と読み込み速度のバランスを取ることが、重要と言えます。たとえば、表示速度が1秒遅延すると、ユーザーは実行したタスクに対して関心を失うというデータもあるほどです。
読み込み速度は、GA4の「行動>サイトの速度>ページ速度」からも確認できます。ページの改善をした際にはチェックして、高速化を目指しましょう。
参考URL:https://marketingnative.jp/how-to-measure-page-speed/
カスタマージャーニーに沿ったレイアウトにする
レイアウトが複雑で分かりにくいと、ユーザーの直帰の原因になってしまいます。そのため、誰にでも分かるようなシンプルなレイアウトを組む必要があるのです。
GA4を利用してユーザーのカスタマージャーニー(ユーザーが商品を認知してから購入利用にいたるまでの道筋)を分析すれば、どのような順番のレイアウトがユーザーにとって分かりやすいか判断するヒントになります。
UX向上に役立つツールを活用する
Webサイト内にUX向上に役立つツールを導入するのも効果的です。
たとえば、カスタマージャーニーマップ(カスタマージャーニーを分かりやすく視覚化したもの)の作成を支援するツール、高いデザイン性を実現するツール、サイトの使用感をチェックしてくれるツールなどがあります。
また、チャットボットをサイト内に設置すれば、身近なチャット形式でユーザーに寄り添ったコミュニケーションが可能になります。
ユーザーはストレスを感じることなくやり取りができるので、スムーズに必要な情報を得て、マーケティングに活かすことが可能です。
関連記事:https://botchan.chat/base/chatbot-comparison
関連記事:https://botchan.chat/base/chatbot2
ユーザーの離脱防止・UX向上なら「BOTCHAN」
エンゲージメントとはGA4に新たに導入された指標で、サイト内でユーザーが起こした何らかのアクションのことです。エンゲージメントに関わるさまざまな指標を活用することで、ユーザーの行動やニーズをこれまでよりさらに詳しく把握することが可能になりました。
エンゲージメントとUXは、顧客満足度を高めるという視点から、非常に関係性が深いと言えます。エンゲージメントの改善には、UX向上の観点からのアプローチが効果的です。
BOTCHANではチャットボットを利用したサービスを提供しています。
BOTCHAN Engagementを活用すれば、離脱しそうなユーザーをLINEに誘導してコミュニケーションをとり、1to1マーケティングで決済までの後押しをします。ユーザーに寄り添った対応でUXを向上させ、エンゲージメントを高められるのです。