ECサイトを運営する担当者にとって、コンバージョン率(CVR)を改善することは、売上に直結する非常に重要な課題の1つです。
業種や業態、取り扱っている商材によって、CVRの目安は異なりますが、自社の優位性を判断する上ではビジネスのベンチマークを知っておく必要があります。
本記事では、ECサイトにおけるCVRの平均・目安や改善する7つの方法、改善施策を行う上で、とても役立つツールなどをご紹介します。
目次
コンバージョン率の基礎知識
CVRとは、ユーザーによるWebサイトへのアクセスのうち、何パーセントの人が運営者の設定したコンバージョン地点に至ったのかを表す重要な指標です。CVRは「コンバージョン数÷セッション数」で算出できます。
CVRを算出する上で欠かせないコンバージョンとは、運営者が設定した何らかの成果地点のことを指します。
例えば、商品の購入や資料請求、リードの獲得、会員登録、問い合わせの送信などが代表的なコンバージョン地点です。
コンバージョン地点はサイトの中に複数あるものですが、ECサイトにおける最も重要なコンバージョン地点は、商品の購入となります。
例えば、購入をコンバージョン地点とする場合は、CVRの計算式は以下の通りです。
ECサイトのコンバージョン率の目安・平均
ECサイトの一般的なCVRの目安に対して、まずは自社サイトはどれくらいの水準なのかを知ることが重要です。
ここでは、ECサイトを運営する担当者が知っておきたい、CVRの目安と、商品ジャンル別の平均CVRを紹介します。
なお、ECサイトに限らない一般的なCVRの平均や目安については、以下の記事で解説しています。ご興味がある方は合わせてご覧ください。
ECサイトのコンバージョン率の目安
ECサイトにおけるCVRは、一般的に1~3%程度が目安とされています。
WordStream社の調査によると、広告経由でのECサイトのCVRは、中央値が1.84%となっています。
中でも、上位25%のECサイトのCVRは3.71%となっており、トップ10のサイトになるとCVRは6.25%となっています。
この数値は、ECサイト以外の法律関係のサイトやBtoBのサービスサイト、金融関係のサイトなどと比べると低い数値です。
なお、WordStream社の別の調査では、広告経由でのECサイトのCVRは0.59%で、検索流入の場合2.81%でした。
広告経由よりも検索流入の方がCVRが高い傾向になっているのは、検索流入の方が購買意欲が高いユーザーが多いことが影響している可能性があります。
ECサイトを運営する上では、上記のCVRを参考に自社サイトの状況を分析・解析するのがおすすめです。
特にECサイトの一般的なCVRよりも、自社サイトのCVRが下回っている場合は、改善するための施策を考えることが急務になります。
ECサイトのコンバージョン率の商品ジャンル別平均
次にECサイトの平均CVRを、商品ジャンル別に紹介します。取り扱っている商品ジャンルの平均CVRと比較する際の参考にしてください。
Adobe社の調査によると、ECサイトの商品ジャンル別の平均CVRは下記の通りです。
– ギフト:4.9%
– ヘルスケア:4.6%
– アパレル:4.2%
– その他:3.4%
– スポーツ:3.1%
– ジュエリー・コスメ:2.9%
– 大手チェーン:2.3%
– インテリア:2.3%
– 自動車:2.2%
– ホームセンター:1.7%
– 家電:1.4%
ジャンル別で見た平均CVRの上位は、ギフトやヘルスケア、アパレルなどとなっており、一方で自動車や家電など、高単価の商品が多い商品ジャンルでは平均CVRが低い傾向にあります。
また、日本の大手ECサイト「楽天市場」においては、優良店はギフトに強く、その中でも優良店10社の平均CVRは4.9%にも上っています。
コンバージョン率が低い要因
CVRが低い要因は業界や広告の打ち出し方によって様々です。
市場や環境は日々変化していくので、一時期に人気があったサイトや製品が売れなくなる、という環境や市場の要因があります。また、自社サイトに原因がある場合も考えられます。
環境や市場の変化
業界の市場の成長の可能性が高くなると競合も多く進出してくるため、自社の見込み顧客が他社へも分散することになります。
また、物価の変化による価格競争が発生すると安価な商品を販売する企業に消費者が移り、経済が悪化すると需要の低下も起こります。また、商品によっては季節性が要因の影響もあります。
近年では、世界中で環境に配慮をしたSDGs(持続可能な開発目標)に取り組む流れがあり、自然や環境に配慮した企業が評価され、商品が購入される、など市場の変化も起きています。
企業も時代の流れに合わせて、環境に配慮した製造方法へ移行し、時代の流れに沿った業態へと変換させていく努力が必要です。
サイトの構造
CVRが低い原因として、自社サイトの構造に問題がある場合があります。
例えば入力フォームの項目が多いと途中で入力を止めてしまう、サイト内の問い合わせフォームがどこにあるのかわかりづらい、サイトの内容に信頼性が低いなど、サイトの構造に原因がある場合があります。
これらに関連するマーケティング用語として、CTA(Call To Action)があります。CTAは日本語で「行動喚起」を指し、ユーザーへ行動を喚起させるために、テキストや画像に対して使われている用語です。
自社サイトへ「商品の購入」や「資料請求」のリンクがあるのは、サイト閲覧者を直ぐに次の行動につなげるためのCTAの方法です。
CTAにつなげるためには、商品購入のボタンをサイトの下部ではなく、サイトの中間など、複数個所への設置や、ボタンのレイアウトや色を目立たせる、など工夫が必要です。
CTAについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
広告の打ち出し方
サイトの目的とユーザーに期待させる内容に乖離があることも購入まで至らず、離脱する要因となります。
ユーザーが広告に興味を持ちクリックをしても、リンク先が自分の興味と異なっている内容と感じ離脱してしまう原因は、広告とサイトの内容が合っていない可能性があるからです。
この場合、自社の目的とするターゲット、ニーズに合った広告を打ち出す必要があります。
さらにCVRにつなげるには、マーケティングで購買へつなげるプロセスを説明するモデルとしてAIDMAが参考になります。
A(Attention)は知る、I(Interest)は興味をもつ、D(Desire)は購入したいと望む、M(Memory)は記憶する、A(Action)は行動をするというプロセスです。
CVRに当てはめるとサイトを広告等で知ってもらい(A)、サイトに記載している内容で興味を持ってもらい(I)、購入・会員登録・資料請求したいと思い(D、M)、行動を起こしてもらいます(A)。
つまり、サイトに訪問したユーザーが閲覧しているうちに購入したいと思わせるプロセスを作る事でCVRが高まります。
訪問者が「購入したい」と思うように、サイト内で訪問者に訴求する内容を明確にし、その内容に沿った文章や画像を効果的に組み立てることが重要です。
ECサイトのコンバージョン率を上げる7つの方法
ECサイトのCVRを上げる7つの方法を紹介します。ECサイトを運営する担当者にとって、CVRを上げることは、とても重要な課題です。紹介するCVRを上げる7つの方法を、改善施策の立案をする際の参考にしてください。
信頼性を高める
ECサイトでは、商品を購入する上で個人情報や決済情報などの重要な情報を入力する必要があります。こういった重要な情報を取り扱う上で、サイトの信頼性はとても大切な要素になります。
万が一、情報漏洩などがあった場合にサイトが受ける損害は計り知れないものとなりますので、情報の取り扱いには細心の注意と徹底したリスク管理が必要です。
また、商品やサービスの質、発送時期、カスタマーサポートの対応、アフターサービスについても信頼性が持てるようユーザーにアピールする必要があります。
ECサイトを運営する上で、信頼性を高めるということはCVRの向上に直結する重要な要素となりますので、信頼性を高めるための施策を日々行うことが大切です。
モバイル端末向けに最適化する
近年、Webサイトへのアクセスの大半がスマートフォン経由となっており、ECサイトも同様にスマートフォンからのアクセスが大半となっています。
モバイル端末でも快適に操作ができるよう、ECサイトをモバイル端末に合わせて最適化することが大切です。
ただし、PCサイトの方がモバイルサイトに比べて入力性や閲覧性が良いという優位性があります。
モバイル端末向けに最適化することはとても重要ですが、ECサイトをレスポンシブWebデザインやダイナミックサービングに対応させるなどの改善を行い、モバイル端末とPC端末の両方に対応させるのがおすすめです。
チェックアウトを簡素化する
ECサイトにおいて、チェックアウトが複雑になると時間や手間がかかりユーザーのストレスになります。ストレスが増えると、離脱やカゴ落ちの原因となりCVRの低下につながるリスクもあります。
ユーザーにかかるストレスを最小限に抑えるためには、チェックアウトの手続きを簡素化することが大切です。
例えば、入力情報を必要最低限の項目のみに絞り込むことや、アカウントを持っていないゲストユーザーでも買い物ができる仕様にするなどの方法が挙げられます。
特に入力情報の絞り込みはとても大切です。絞り込む際のポイントとしては、重要度の低い項目はなるべく排除することが挙げられます。
配送で利便性を高める
ECサイトのCVRを上げる上で、配送の利便性を高めることはとても重要です。配送は迅速さ、安価さ、丁寧さ、そして受け取り方法が選択できると利便性が高まります。中でも迅速な配送や送料無料などの訴求材料があると、商品購入のハードルが下がりやすいのでおすすめです。ユーザーにとって利便性の高い配送を行うことにより顧客満足度が向上し、CVRの向上にも直結します。
例えば、メール便は小さい商品に限定されますが、迅速に安く商品を届けることができます。その他にも宅配便やゆうパックなどが一般的に利用されている配送手段であり便利かつ安心です。
商品レビュー・事例などを紹介する
ECサイトは、実店舗での商品販売と比べて、商品が届くまで手に取って実物を確認することができず「実物がわからない」というのが、商品を購入する際の不安材料になります。
この不安を解消するためには、商品レビューや購入事例などを掲載することが大切で、実際にECサイトのユーザーの多くが、商品購入前にレビューを確認するとされているのです。
商品購入に対する不安材料を解消することは、CVRの向上に直結するため、レビューや購入事例を掲載することがおすすめです。
サポート体制を強化する
ECサイトにおいて、CVRを向上させるためには、ユーザーからの問い合わせに対して、迅速かつ丁寧に対応できるようにサポート体制を充実させる必要があります。
問い合わせに対するカスタマーサポートはもちろん、購入後のアフターフォローやクレーム、返品対応などに対するカスタマーサポートを高い質で行うことが大切です。
このように充実したカスタマーサポートを行うことによって、顧客満足度の向上に直結するのはもちろん、ユーザーとの信頼関係を築くことができます。
ユーザーとの信頼関係を築くことができれば、ロイヤリティーの高いユーザーの育成にもつながるでしょう。
購入への導線設計を見直す
CVRの向上を実現するためには、スムーズで分かりやすく自然にコンバージョン地点に誘導するための導線設計が重要になります。
ECサイトの中でも、特に複数の商品を扱うサイトは「サイト内のどこに何があるのか分かりにくい」、「目的の商品が探しにくい」といったケースに陥ることがあります。
そのような状態に陥らないためには、「CTA(Call To Action)ボタンを分かりやすく配置する」、「目的の商品を探しやすい導線を設計する」など、ユーザー目線でコンバージョン地点にたどり着きやすい構造を構築することが大切です。
コンバージョン地点までの導線を改善することは、CVR向上に直結するのでとても重要な要素になります。
ECサイトのコンバージョン率改善に役立つツール
次にECサイトのCVRを改善する上で、導入を検討したい役立つツールを紹介します。ECサイトを運営している担当者は、ぜひCVR改善の参考にしてください。
分析・解析ツール
ECサイトのCVRを改善する上で、ユーザーのアクセス状況やサイト内での動きを分析・解析するツールは必要不可欠です。
分析・解析ツールの中でも代表的なBI(Business Intelligence)ツールの1つに「Google Analytics(グーグル アナリティクス)」があります。
ユーザー属性や集客経路、閲覧ページ、滞在時間などの行動データからコンバージョンの測定などを一元的に行い、分析・解析することが可能です。
BIツールの他には、マウスの動きを色の濃さで表現することにより、ユーザーの動きや心理を可視化するヒートマップツールなどがあります。
ヒートマップツールでは、どの部分が熟読されているかを計測する「熟読ヒートマップ」や、どの部分がクリックされているかを計測する「クリックヒートマップ」などを用いて、分析・解析することが可能です。
ヒートマップツールは色を使ってページ内の行動を可視化してくれるので、改善策の発見につながります。
販促ツール
ECサイトのCVRを向上させるために活用したいのが販促ツールです。販促ツールとは、ユーザーの情報を管理して、最適なタイミングで最適な商品やサービス、キャンペーン情報などをレコメンドできるツールです。
例えば、CRM(Customer Relationship Management)やMA(Marketing Automation)などのツールが有名で、ユーザーの情報や購買履歴、サイト内の行動履歴などのデータを一元管理。
また、おすすめ商品やキャンペーン情報などをユーザーに通知することもできます。
販促ツールを導入すればユーザーの情報を分析することができ、大量のユーザーに対してパーソナライズされた提案をすることが可能となります。その結果、CVRの改善を期待できるのです。
Web接客ツール
ECサイトのCVR改善を行う上では、Web接客ツールを活用することもおすすめです。Web接客ツールとは、ユーザーの行動から心理状態を分析し、それに合わせて最適な提案を行うツールです。
例えば、商品の購入を検討しているユーザーに対して、画面に最適なタイミングでクーポン情報のポップアップを表示したり、サイトから離脱しそうなユーザーを察知した場合に、別のコンテンツを提案したりするなどの施策が可能になります。
あるいは、ユーザーが選択した選択肢や入力したテキストに対して、自動で返答を行いコンバージョンに誘導できるチャットボットも効果的なツールです。
特にチャットボットは、近年の技術進歩に伴い普及が進んでいるツールで、フレンドリーかつ的確な会話を実現することにより、ユーザーの疑問を解消しCVRを改善する効果が期待できます。
チャットボットについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
ECサイトのコンバージョン率が向上した事例
先ほど、ECサイトのCVR改善策としてチャットボットの活用をおすすめしました。
本見出しでは、実際にチャットボットを活用して、CVRを改善させた事例を紹介します。
CVRが200%改善
株式会社レッドビジョン
導入の目的:カゴ落ちの改善、CVRの改善
導入後の成果:CVRが約200%改善
ヘアケアブランド「マイナチュレ」を販売する株式会社レッドビジョンでは、自社で運営する女性向けECサイトのカート内での離脱率が高いという悩みを抱えていました。
そこでチャットボットを導入し、チャット内で決済まで完結できるようにしたところ、CVRが約200%改善。
購入から決済にいたるまでの手順を面倒だと感じさせない方法として、メッセージアプリのようなインターフェースでやりとりできるチャットボットが有効だと分かります。
本事例に関する詳細にご興味のある方は、こちらの記事をご覧ください↓
CVRが140%改善
株式会社クロコス
導入の目的:CVRの改善
導入後の成果:CVRが140%改善
ハンド美容液「Siro jam(シロジャム)」を展開する株式会社クロコスは、商品LPからのCVRを高めるため、チャットボットを設置しました。
チャットボット内の設問項目の順番を変更したり、画像を活用したビジュアル訴求をしたりするなどの工夫によって、チャットボット導入後のCVRは140%改善。
ただ、チャットボット導入の効果はそれだけにはとどまりませんでした。
チャットボット内での商品の購入後、商品に合わせて別商品や別プランの案内をすることによって、アップセルやクロスセルをすることに成功。
チャットボット内の項目や文言、画像などを柔軟にカスタマイズできる特性を生かした事例となりました。
こちらの事例詳細にご興味ある方は、ぜひ下記の記事をご覧ください↓
CVRが向上
株式会社ファンファレ
導入の目的:売上の増加
導入後の成果:CVRが向上
スキンケア商品「ととのうみすと」を展開する株式会社ファンファレは、カゴ落ち率の改善がなかなかできないという課題を抱えていました。
そんななか、商品LP(ランディングページ)に新たな購入フォームとして設置したのがチャットボット。
スムーズな入力体験により、CVR(=購入率)は向上。
在庫切れの危機に直面するという、うれしい誤算もありました。
チャットボットの設置によってカゴ落ち率を改善した事例です。
こちらの事例に関してより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください↓
まとめ
ECサイトを運営している担当者にとって、CVRを改善することは、売上に直結する重要な課題です。
CVRの改善施策を行うためには、上記でご紹介した7つの改善法を実施することがおすすめですが、中でも販促ツールやWeb接客ツールなどを導入して、より効果的な改善を目指すことが理想的と言えます。