マーケティングの効果を高めるための施策として、リテンションを行うことは重要です。
リテンションとは英語のretentionのことで、日本語に訳すと「維持・保持」という意味です。主に、マーケティング業界と人事業界で使われることの多い用語ですが、実は2つの業界における意味合いはそれぞれ異なります。
今回の記事では、マーケティング業界での意味と効果的な施策について詳しく説明しています。
この記事を読むと、
・リテンション/リテンション率とは?
・リテンション施策を行うメリット
・効果的な施策例
・施策の事例
などが分かります。
目次
リテンションとは
まずは、マーケティング業界と人事業界におけるリテンションの意味の違いについて見ていきましょう。
マーケティングにおけるリテンション
マーケティング業界におけるリテンションとは、顧客に自社商品やサービスを長期的・継続的に利用してもらうための活動のことです。
一度取引のあった顧客が定着せず離れてしまうと、企業は安定した利益を得るために、新たに新規顧客獲得を行わなければなりません。しかし、現在の日本市場において新規顧客獲得にかかるコストは非常に高騰しています。
マーケティング業界でよく使われる用語に、「1:5の法則」というものがあります。これは、「新規顧客獲得には既存顧客維持よりも5倍の費用がかかる」という意味で、新規顧客獲得にかかるコストがいかに高いかをよく表しています。
つまり、現在の日本市場においては、新規顧客獲得にばかり力を注いでもコストがかかるだけで利益につながらないのです。
こうした現状から、企業はリテンションを行い、既存顧客との安定的な関係性の維持にも注力する必要があるといえます。
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備考:人事におけるリテンション
人事業界においては、獲得した優秀な人材の離退職を引き止め、定着させるための施策を意味します。
現在の人事業界では売り手市場のため、コアとなる人材や将来企業を牽引するような若手の流出はどうしても避けたいところです。リテンションは、企業を安定的に成長させるために欠かせない施策と言えます。
具体的な施策としては、キャリアプランの提示や労働環境の改善などが挙げられます。
リテンションを実施する際は「リテンション率」も重要
では、リテンション導入にあたっては何を指標にすればよいのでしょうか。
注目すべき数値のひとつとして、「リテンション率」が挙げられます。マーケティング用語では、リテンションレートの頭文字を取ってRRと略したりします。
リテンション率とは商品やサービスがどれだけ顧客に定着しているか、いかに継続的に利用されているかを表す指標で、既存顧客維持率とも言われます。
指標となる数値を計算し管理することで、施策の導入効果を測れるだけでなく、顧客ニーズの変化などに気がつくきっかけにもなります。そのため、定期的な計測は顧客との継続的な関係性の維持に有用と言えるのです。
また、自社のサービスにどれだけファンが付いているか?という定性的な問いに対する指標にもなります。
リテンション率とは
前述のリテンション率について、もう少し詳しく見ていきましょう。
ここでは、
・リテンション率の向上で得られる効果
・計算方法
を紹介します。
リテンション率の向上で得られる効果
リテンション率を改善すると、以下の2点の効果が得られます。
・安定的な利益構造が確立できる
・広告・宣伝費用を削減できる
リテンション率を向上させると顧客との良好な関係の維持ができ、結果としてリピーター獲得に繋がります。継続的な利益が見込めるようになれば企業の利益構造の安定化が図れるため、企業はさらなる業態やサービスの改善に乗り出しやすくなり、持続的な企業成長が実現できるのです。
また、継続的に商品やサービスを利用してくれるリピーターは、既に企業やブランドの価値を十分理解しているため、新商品の発売時などに新規顧客向けのような大々的なPRをしなくても興味を持ってくれるようになります。
さらに、ストアロイヤルティの高い優良顧客は、SNSやECサイトの口コミにポジティブな情報を拡散してくれることがあります。
消費者庁が行った「令和2年消費者意識基本調査」によると、回答者全体の約40%が商品やサービス購入時に口コミを意識すると答えました。このように、リテンション率を向上させることで、広告・宣伝費用の削減にもなるのです。
リテンション率の計算方法
では、リテンション率はどのように計算するのでしょうか。
計算式は以下の通りです。
一定期間の継続顧客数÷一定期間の新規顧客数×100
たとえば、ある一定期間における新規顧客数が100人で、そのうち当該期間内に20人の顧客が離れていったとしましょう。この場合、継続顧客数は80人ということになるので、
80÷100×100=80
リテンション率は80%ということが分かります。
リテンションを行う目的
リテンション率向上にさまざまなメリットがあることは前述の通りですが、そもそもリテンションが目指すゴールとは何でしょうか。
主な目的のひとつに、LTVの向上が挙げられます。
LTVとはLife Time Valueの略称で、日本語では「顧客生涯価値」と言います。LTVは、顧客一人当たりが生涯にわたって、企業にどれほど貢献してくれるのかを測る指標です。
前述した「1:5の法則」でも分かるように、現代では新規顧客の獲得が困難になりつつあるため、企業はこれまでの1回の取引にのみ注力する売り切りモデルから、既存顧客維持に取り組む必要が出てきました。
このようなことから、既存顧客との長期的な関係性を構築するにあたって、LTVの観点は非常に有用と言えるでしょう。
リテンションを行い、顧客との関係性維持によってLTVを向上させることができれば、企業は長期間にわたって安定した経営を続けられるのです。
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マーケティングに効果的なリテンションの施策
次に、実際のマーケティング現場で効果を発揮する施策をご紹介します。
効果的なリテンション施策は、次の5点です。
・情報管理ツールの利用
・カスタマーサポートの充実
・ロイヤリティプログラムの導入
・継続的なコミュニケーション
・商品やサービスの品質改善
それではひとつずつ見ていきましょう。
情報管理ツールの利用
情報管理ツールを利用し、適切にデータを管理・活用することはリテンション施策として効果的です。
最適なリテンションを行うためには、顧客ひとりひとりのニーズにあった対応をする必要があります。企業は、顧客や市場などに関する膨大な量のデータを管理しなくてはなりません。もしすべてを人の手だけで行うと、大幅な時間や人員を要するだけでなく、ミスが起きるリスクも考えられます。
そのため、リテンション施策として、情報管理ツールの利用は欠かせないのです。たとえば、CRMツールは必須のツールと言えます。
CRMとはCustomer Relationship Managementの略で、日本語に訳すと「顧客関係管理」という意味です。
CRMツールを利用すると、顧客ひとりひとりの個人情報やあらゆる接点での履歴などを一元的に管理・分析ができます。そのため、顧客のニーズを正確に把握し、ひとりひとりに合った最適な提案が可能になるのです。
また、DMP(Date Management Platform)ツールを利用すると、顧客情報以外にも外部データなど広い範囲での情報管理ができます。
自社の状況から必要なツールを利用することで、効率よくリテンションを行いましょう。
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カスタマーサポートの充実
カスタマーサポートの充実は、カスタマーサクセスの観点からリテンションに有用な施策と言えます。
カスタマーサクセスとは、提供する商品やサービスを通じて顧客に成功体験の提供を目指す手法です。
インターネットの普及から、口コミが顧客の購買行動に強く影響することは前述の通りですが、これ以外にもTwitterやInstagramなどのSNSを通じて顧客は商品やサービスを利用した感想や、ライフスタイルなどを共有し合っています。
顧客の価値は、これまでの「商品を所有すること」から「商品を利用した成功体験」へと移っているのです。
カスタマーサポートは、直接のクレームや問い合わせの対応を担当することから、顧客に最も近い部署と言えます。たとえ、商品のスペックに不備があったなどで一度は顧客の気持ちが離れそうになったとしても、カスタマーサポートの対応次第では「問い合わせてよかった」「良い結果に結びついた」という成功体験へと結びつけられるのです。
カスタマーサクセスの実現は顧客のファン化にも繋がります。そのため、顧客からの問い合わせに即座に対応できる体制づくりや、顧客対応スキルの向上といったカスタマーサポートの充実は、リテンションに効果的と言えるのです。
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ロイヤリティプログラムの導入
ロイヤリティプログラムの導入は顧客のリピーター化やファン化に役立つため、リテンションに有用です。
ロイヤリティプログラムとは、会員登録や長期利用をしてくれる顧客に対して行う優遇プログラムのことを指します。
たとえば、顧客限定セールやポイントアッププログラム、先行販売、誕生日特典などが挙げられますが、利用した経験のある方も多いのではないでしょうか。
これらのプログラムは、一部の限定された顧客のみを対象とすることで「特別な体験」を提供できます。顧客にとって特別な体験を提供することで顧客の心に感動を与え、企業やブランドに対する愛着を強めるのです。
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継続的なコミュニケーション
リテンションのためには、顧客と継続的なコミュニケーションを取り続けることも欠かせません。
現在の日本市場には、高品質な商品やサービスが溢れています。そんな中で、自社の商品やサービスを継続的に利用してもらうためには、顧客に忘れ去られないような工夫を凝らすことが重要なのです。
方法例としてまず考えられるのは、ダイレクトメールやリマインドメールなどOne to Oneコミュニケーションです。これらは顧客ひとりひとりのニーズに的確にアプローチできるため、リテンションには有効的と言えます。
その他にも、SNSや広告などを利用したコミュニケーション方法もあります。これらの方法は直接的な反応には繋がりにくい一方で、目に入りやすいので商品やサービスの想起に繋がり、完全に忘れられてしまうことを防ぐ効果もあるのです。
商品やサービスの品質改善
お客様の声やクレーム、顧客の行動ログの分析などから商品やサービスの品質改善を行うことも、リテンションには有用です。
こうした取り組みは、実際の品質向上が実現できるだけでなく、顧客満足度アップにも繋がります。
特に、クレームに対するアクションは重要です。クレームが来るということは、企業や商品に期待が残っていることの表れとも言えます。適切な対応と品質改善に真摯に向き合う姿勢を示すことが、顧客からの信頼度を向上させるのです。
リテンション施策を実施するポイント
実際にリテンション施策を行う際には、次の3点を意識しましょう。
・指標を明確にする
・顧客をセグメントする
・データを活用し顧客理解を深める
これらのポイントを押さえることで、リテンション施策に対して高い効果を実現できます。
指標を明確にする
リテンション施策にはさまざまな方法が挙げられますが、実際の効果を測るための指標をあらかじめ決めておくことは重要です。既にご紹介した「リテンション率」は、リテンションの効果を測る上では重要な指標となります。
他にも「ユニットエコノミクス」は、リテンション効果を測定するのによく使われる指標です。
ユニットエコノミクスとは、顧客一人当たりの収益性のことで、新規顧客獲得費用が適正かどうかを判断するときに役立ちます。
算出式は、以下の通りです。
ユニットエコノミクス=LTV÷CAC(Customer Aquisition Cost:顧客獲得費用)
このとき、ユニットエコノミクスは3以上あること(LTVがCACの3倍以上であること)が好ましいとされています。
これらの指標やLTVを合わせて用いると、自社の現状を総合的に判断できます。
顧客をセグメントする
リテンションを実施する前に顧客をセグメントすることも、重要なポイントです。
セグメントとは分類のことで、顧客の属性や行動履歴などのデータを参考に行います。たとえば、「はじめての利用である」「特定ジャンルの商品を連続して購入している」「クーポンを利用している」などの項目で分類します。すると、メッセージを送る最適なタイミングやおすすめすべき商品、必要とされる情報を見極めることが可能になるのです。
セグメントによく活用される手法に「RFM分析」があります。
これは、
・「R」:Recently(直近の購入日)
・「F」:Frequency(商品やサービスの購入頻度)
・「M」:Monetary(累計購入金額)
の頭文字をとった分析方法であり、顧客を「優良顧客」「休眠顧客」「離反客」などに分類し、それぞれに対する最適なアプローチが可能です。
データを活用し顧客理解を深める
リテンション施策開始後も、データの収集・分析を続けて顧客理解を深めましょう。
アプローチによって得られた効果は定期的に測定して、変化の動向を把握します。また、集めた情報は分析し、次の施策に活かすことでさらに効果を上げられるのです。
このように、常にPDCAサイクルを回して顧客のニーズに合った施策を実施し続けることは、リテンションマーケティングにおいて非常に重要なのです。
リテンション施策を実施する際の注意点
長期間にわたって多くのメリットがあるリテンション施策ですが、導入に際して注意するべき点もあります。
それは、顧客が迷惑に感じるコミュニケーションを取らないようにすることです。
たとえば、いくら顧客との接点を持ち続けることが重要といっても、必要のない情報の提供や多すぎるメールの配信を行ってしまうと、顧客に「しつこい」「必要がない」という印象を与えてしまいます。こうした印象は、逆に顧客離れの原因にもなってしまいます。
さまざまな情報を分析して顧客理解を深め、適切なアプローチに留めることもリテンション成功の要因のひとつになるのです。
リテンション施策の成功事例5選
では、実際にリテンションの導入に成功している企業の事例を見てみましょう
Netflix(ネットフリックス)
画像引用:https://www.netflix.com/jp/
【主な事業】
エンターテイメントサービスの提供
【施策】
・高精度のリコメンド機能
・サブスクリプションビジネスの採用
・解約ページにチャットボットを設置
【結果】
・世界190ヶ国以上への利用拡大
・解約希望者のうち約10%の顧客の解約阻止
Netflixは、サブスクリプションビジネスの代表格とも言われる企業です。独自のアルゴリズムを搭載したリコメンド機能は、予想外で的確なラインナップを教えてくれます。また、解約ページに設置したチャットボットは顧客の生の声も効果的に聞き出してくれるため、サービスの改善にも役立つそうです。
参考URL:https://www.gentosha-mc.com/column/retention-marketing/
ゴルフダイジェスト・オンライン
画像引用:https://www.golfdigest.co.jp/
【主な事業内容】
・ゴルフメディア運営
・ゴルフ用品販売
・ゴルフレッスン
・ゴルフ場予約
【施策】
・DMPの導入
・アプリユーザー向けのクーポンプレゼント企画
・セグメントごとの顧客対応
【結果】
・クーポン使用率が向上し、売上アップに
・顧客ひとりひとりとのコミュニケーション強化
ゴルフダイジェスト・オンラインでは、DMPを導入してさまざまなデータを集約・活用しています。顧客のセグメントも進め、それぞれに最適なアプローチを行うことで売上アップも実現しています。
参考URL:https://moduleapps.com/mobile-marketing/12518rpt/
IKEA(イケア)
画像引用:https://www.ikea.com/jp/ja/
【主な事業】
家具の設計・製造および販売
【施策】
会員限定の店舗宿泊イベントの開催
【結果】
幅広い世代でのファン獲得
IKEAは、会員限定メールからの応募で参加できる店舗宿泊イベントを不定期に開催しています。イベント中には店舗内の社会見学ができたり、参加者同士のIKEA愛を語り合う時間を設けたりと、愛着を強めるための工夫が数多くされています。家族で参加する顧客も多く、親世代だけでなく子世代のファン獲得も進められているようでした。
参考URL:https://www.wwdjapan.com/articles/466341
星野リゾート
画像引用:https://www.hoshinoresorts.com/
【主な事業】
・リゾート・温泉旅館経営
・フード事業
・ブライダル事業
【施策】
・地域ごとに異なるコンセプトやサービス
・顧客情報のデータ化・活用
【結果】
・客室稼働率70%以上
・リピート率20%以上
星野リゾートでは、徹底的な顧客情報のデータ化が行われています。顧客ごとの要望や志向などをデータとして記録し管理することで、ひとりひとりに最適なおもてなしのアップデートを図っているのです。その結果、通常は40%程度とされる客室稼働率は70%を超え、5人に一人はリピーターになってくれるという驚異的な数値を残しています。
参考URL:https://note.com/since2018/n/nc1f7598d9f0a
東京ヤクルトスワローズ
画像引用:https://www.yakult-swallows.co.jp/
【主な事業】
プロ野球球団の運営
【施策】
・CRMツールの導入
・ファンクラブ限定サービスの充実
【結果】
・シーズンチケット売り上げが前年比130%達成
・ファンクラブ会員の増加
東京ヤクルトスワローズでは、それまで代行会社に任せていたチケット販売を自社で行うためにCRMツールを導入し、チケットの一元管理に取り組みました。CRMを通じて顧客のニーズを把握したことで、チケット販売売り上げがアップしただけでなく、ファンクラブ会員増加や球場運営の改善にも役立っています。
参考URL:https://www.hitachi-solutions.co.jp/flp/case03/
効果的なリテンションならBOTCHAN Engagement
リテンションは、新規顧客獲得が困難になった日本市場において、既存顧客とのつながりを維持するための手法として注目されています。
リテンションを行う主な目的は、LTV向上です。LTVを高めると、企業は安定的な利益構造を獲得できます。そのため、安心して事業拡大など企業成長のための活動が行えるのです。
顧客との適切なコミュニケーションを行い、つなぎ止めを図るためには非常に幅広い情報を収集・分析する必要があります。こうした工程を全て人の手で行うことはミスのリスクが高いので、リテンションの効果を上げるためにはツールの利用が欠かせません。
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