
ロイヤルカスタマーとは、自社の製品やサービスのファンである顧客を指します。ロイヤルカスタマーの増加は顧客基盤の増強や収益性の上昇につながるなど、多くのメリットを期待できます。
本記事では「ロイヤルカスタマーとは何か」、「優良顧客とどう違うのか」について解説します。
さらに、顧客タイプの分析方法やロイヤルカスタマーを育成するステップ、ロイヤルカスタマー獲得に役立つツールも紹介するので、マーケティング戦略を立てる時の参考にしてください。
ロイヤルカスタマーについて知っておくべき3つのポイント
ロイヤルカスタマーとは自社の製品やサービスを信頼し、愛着を感じている顧客を意味します。ここでは、ロイヤルカスタマーの特徴や優良顧客との相違点、ロイヤルカスタマー獲得のメリットについて解説します。
特徴
ロイヤルカスタマーとは、ロイヤルティを持つ顧客です。顧客が企業のブランドや商品、サービスなどに対して感じる愛着や信頼をロイヤルティと言います。
すなわち、ロイヤルカスタマーは特定企業の商品やサービスに対し、愛着や信頼感のある顧客です。
ロイヤルカスタマーの特徴には「購入や利用を繰り返し行う」、「競合他社の商品やサービスに目移りしない」、「周囲の人にブランドや商品、サービスをおすすめしてくれる」などがあります。
優良顧客との違い
ロイヤルカスタマーは優良顧客ですが、優良顧客の全てがロイヤルカスタマーとは限りません。
優良顧客とは、利用単価や購入・利用の頻度が高いなど、収益性の高い顧客全般を意味します。しかし、優良顧客の中には、商品やサービスに対し、特に愛着や信頼感を持っていない人もいるのです。
単なる優良顧客は、あっさりと競合に乗り換える可能性があります。一方、ロイヤルカスタマーは長期にわたって強い愛着と信頼感を持ち続け、ブランドを裏切ることがありません。
獲得する意義
ロイヤルカスタマーが増えると、主に3つのメリットがあります。
まず、一度ロイヤルカスタマーになってもらえば、商品やサービスを長期間・高頻度で繰り返し利用してくれることが多いため、LTV(顧客生涯価値)が向上します。
次に、ロイヤルカスタマーは家族や友人など周りの人に対して、商品やサービスの良い評価を伝え、おすすめしてくれます。
さらに、企業はロイヤルカスタマーと関係を深めることによって、有益で良質な情報交換の機会を得ることが可能です。
例えば、商品やサービスに対しロイヤルカスタマーから建設的なフィードバックを提供してもらうことによって、企業側は改善点に気付くことができます。
顧客のロイヤリティを分析する手法
これからロイヤルカスタマーを増やしていきたいと考える企業は多いでしょう。そのためには、既存の顧客情報などの現状分析が大切です。
ここでは、顧客のロイヤルティを分析する方法と、判断基準である「LTV」、「NPS」、「RFM」、「CPM」について解説します。
LTV
LTV(Life Time Value)は「顧客生涯価値」、つまり顧客が生涯の中で商品・サービスを利用し続けることによって企業が得られる総利益です。
ロイヤルカスタマーのLTVは高い傾向にあり、LTVの分析がロイヤルティの分析にも役立ちます。
LTV分析のメリットは、ロイヤルカスタマー獲得の大きな目的の1つである「利益獲得」を基準とした分析ができることです。
一方、優良顧客ではあってもロイヤルカスタマーにはなっていない顧客の要望や不満、細かいニーズを汲み取れないことが、LTVのデメリットと言えます。
例えば「他ブランドへの乗り換えが面倒くさいので同じブランドを継続的に利用しているが、満足はしていない」といった意見は、LTVの数値からは浮かび上がってきにくいです。
NPS
NPS(Net Promoter Score/ネットプロモータースコア)は「推奨者の正味比率」とも呼ばれ、顧客が企業に対して感じている愛着や信頼の度合いを判断する指標です。
まず「弊社の商品やサービスを周りの人におすすめしますか」というアンケートを10点満点で実施します。
顧客は回答内容により、0~6が「批判者」、7~8が「中立者」、9~10が「推奨者」と、3つに分類されます。
点数だけでなく、その点数を付けた理由も回答してもらえば、さらに深い分析が可能です。
定性面・定量面からロイヤルティを分析できることが、NPSのメリットと言えます。
一方でNPS調査だけでは、ロイヤルティが利益や購買頻度などの顧客実績に対して、どのように関係しているのかを分析できない点がデメリットです。
RFM
RFM分析は「Recency(最終購入日)」、「Frequency(購入頻度)」、「Monetary(購入金額)」といった3つの指標を基準として、顧客ランクを分析する手法です。
これら3つの指標をスコア化することによって、顧客を「優良顧客」、「休眠顧客」、「見込み客」、「新規顧客」、「離反客」などのパターンに分類できます。
3つの要素はいずれも数字データのため、比較的、容易に蓄積できる情報です。それらを使用して簡単に分析できることがRFM分析のメリットと言えます。
一方、購入や利用の動機、商品やサービスなどへの愛着など、定量的に計測できない要素を除外している点がRFM分析のデメリットです。
RFM分析だけでは単なる優良顧客とロイヤルカスタマーを区別できません。
CPM
CPM(Customer Portfolio Management/顧客ポートフォリオマネジメント)は、RFM分析の基準である3つの要素に「顧客の在籍期間」も加えて顧客を分類する分析方法です。
これら4つの要素にもとづき、顧客は以下の10パターンに分類されます。
– 初回現役客
– よちよち(※)現役客
– コツコツ(※)現役客
– 流行(※)現役客
– 優良(※)現役客
– 初回離脱客
– よちよち離脱客
– コツコツ離脱客
– 流行離脱客
– 優良離脱客
(※よちよち:設定期間内に2回以上の購入実績/コツコツ:設定期間内に安定したリピート購入実績/流行:設定期間(短期)内に設定金額以上の購入実績/優良:設定期間(長期)内に設定金額以上の購入実績)
CPMのメリットは、「最終購入日」と「顧客の在籍期間」という2つの時間軸を分類基準として設定することによって、顧客パターンを細分化でき、施策の最適化に役立てられることです。
一方、顧客パターンの分類が細かいため、個別のアプローチの立案・実行や顧客管理が難しい点はCPMのデメリットと言えるでしょう。
ロイヤルカスタマーを育成するための4つのステップ
顧客がロイヤルカスタマーになってくれるように育成するには、ターゲティングから効果検証まで、大きく分けて4つのステップがあります。ここでは、それぞれのステップについて順番に解説します。
ロイヤルカスタマーを定義する
まず、ロイヤルカスタマーとは自社にとってどのような存在なのかを分析し、目標として設定する必要があります。
上で述べた分析手法の指標を利用しつつ、さらに多くの基準から定量的・定性的に検討しましょう。
例えば、LTVや購入頻度、購入単価、商品やサービスを友人・知人におすすめしてくれる度合いなどが基準になります。
また、事業の業務目標としては「顧客のうち何割くらいをロイヤルカスタマーにすることが理想的なのか」というゴールも設定しましょう。
ナーチャリングのシナリオを設計する
ナーチャリングとは顧客の育成です。既存顧客をナーチャリング(育成)することによって、ロイヤルカスタマーを獲得できます。
まず、既存の顧客パターンのうち、どの顧客がロイヤルカスタマーに変わる見込みが大きいかを検討した上で、ターゲットを設定しましょう。
次に、ターゲットが潜在顧客層から顕在顧客層へ移行するように、顧客の行動パターンを視覚化したカスタマージャーニーマップなどを作成し、シミュレーションします。
さらに、販促プランとしてプロモーションやキャンペーンなども企画・実施しましょう。
実行体制を構築する
ロイヤルカスタマー育成・獲得計画の実行体制を、以下のステップで構築します。まず、担当者をアサインし、ロイヤルカスタマーの育成・獲得計画を実行する組織を構築しましょう。
担当者のアサインにあたっては、顧客分析や施策の立案、プランの実行など、それぞれの作業を得意とする人材をバランス良く配置することが大切です。
並行して、施策を実行するために必要なツールなども用意しましょう。
継続的に効果検証を行う
ロイヤルカスタマーを育成・獲得するためには、単発の施策を実施しさえすれば良いというものではなく、一定期間、継続して実施する必要があります。
なぜなら、施策の計画当初に描いたシナリオの通りに進行できるケースはほとんどないからです。むしろ、計画の不足が判明したり、想定していなかった事態が発生したりする場合が多いでしょう。
そこで、定期的に計画の効果を検証しながら改善を繰り返し、少しずつ、施策の精度を上げていくことが大切なのです。
ロイヤルカスタマー獲得の成功事例
これまでにロイヤルカスタマー獲得・育成に成功した企業は、どのような施策を実施しているでしょうか。成功事例として、オリエンタルランド、Apple、スターバックスを以下でそれぞれ、紹介します。
オリエンタルランド
オリエンタルランドは東京ディズニーリゾートを運営する企業です。不変の取り組みとして、家族が一緒に、かつ、それぞれの楽しみ方ができる「ファミリーエンターテイメント」という理念を設定しています。
まず、ゲストの幼少期からファミリーで来園してもらうことによって、東京ディズニーリゾートのファンを誕生させる計画です。
さらに、ゲストが成長してからも人生の各年代で繰り返し来園してもらうことによって、ブランドへの親しみや愛着が養っていかれます。
Apple(アップル)
AppleはパソコンからiPadやiPhoneまで、魅力的な製品ラインナップを展開しています。Apple製品の特徴は、機能的でスタイリッシュなビジュアル、感覚的に操作できる点などです。
このように、他社とは全く異なる個性的なブランドを構築することによって、Appleは熱狂的なファンを獲得・育成してきました。
例えば、iPhoneのユーザーは他端末のユーザーよりもリピートする意欲や実際のリピート率が高いという調査結果も出ています。顧客のロイヤルカスタマー化に成功した好例と言えるでしょう。
スターバックス
コーヒーチェーン店のスターバックスは、顧客に特別な体験をしてもらうため、店舗を家でも職場でもない「サードプレイス(第三の場所)」として、提供する取り組みを実施しています。
加えて「スターバックス リワード」制度など、顧客の利用状況に応じてランク付けを行う独自の制度も特徴的です。
商品やサービスを頻繁に利用する動機を与えることによって、顧客の囲い込みやファン化を促しました。
こういった取り組みが、常連を自負する顧客のファン心理をくすぐり、ロイヤルカスタマー化に成功したのです。
ロイヤルカスタマーを増やす際に役立つツール
ロイヤルカスタマーを増やす施策を実行するには、顧客情報の分析やそれにもとづく販促計画などを算出するツールがあると便利です。
ここでは、「顧客情報管理ツール」、「販促ツール」、「Web接客ツール」の3種類について解説します。
顧客情報管理ツール
顧客情報管理ツールとは、従業員と顧客が過去に行ったやりとりなど、企業と顧客の関係を一元管理するためのツールです。
顧客情報管理ツールを代表するものとしてはCRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理ツール)があります。
CRMを活用すれば、顧客の属性や購入履歴、メールやSNSなどを通じたやりとり、業務管理など、顧客と企業の関係性に関わるあらゆる情報の管理が可能です。
CRMによって顧客のロイヤルティを把握した上で、分析や施策立案に役立てることがロイヤルカスタマー獲得につながります。
販促ツール
販促ツールは、顧客情報管理に基づき、顧客一人ひとりに最適なタイミングで最適な商品やサービス、キャンペーン情報をレコメンドしてくれるツールです。
販促ツールの例として、MA(Marketing Automation/マーケティングオートメーション)などが挙げられます。
MAを活用すれば、顧客情報を一元管理し、効率的かつ深く分析することが可能です。見込み客に対し、個別に最適化されたレコメンドをタイムリーに提供するOne to Oneマーケティングも実現できます。
また、見込み客ごとに最適なメールを送信するなど、きめ細かい販促もできるため、アップセルやクロスセルにも役立つでしょう。
Web接客ツール
Web接客ツールとは、チャットボットがWebサイト訪問者の疑問や質問に回答したり、ポップアップでユーザーの状況や属性にマッチする情報を提供したりするツールです。
Webサイト訪問者を待たせることなく、一人ひとりの要求に細かく対応することによって、疑問の解決やCV(コンバージョン)の促進に役立てることができます。
Webサイト訪問者の満足度を高めることは、ロイヤルカスタマーを増やすことにもつながるでしょう。
まとめ
ロイヤルカスタマーは企業ブランドや商品、サービスに信頼を寄せて支持してくれる存在です。加えて、フィードバックの提供や好意的な口コミの拡散など、マーケティングにおいて重要な役割を果たしてくれます。
ロイヤルカスタマーを育成・獲得するには、顧客情報を分析し、顧客パターンに合わせた施策を継続的に行いましょう。
CRMやMA、Web接客ツールなど、ロイヤルカスタマー育成・獲得に役立つツールを上手に活用することも大切です。