購入単価とは、1回の購買時に顧客1人当たりが支払う総額を指すものです。本記事では、購入単価の概要や計算方法、向上させるためのポイントを解説。
また、実際に購入単価を向上させた企業事例と、施策に役立つツールも併せて紹介します。
目次
購入単価の意味や計算方法
売上の分析や改善に大きく貢献する指標となる購入単価。客単価や顧客単価など似た言葉もありますが、どのような違いがあるのでしょうか。
ここでは改めて購入単価の意味や重要性、計算方法を紹介します。
意味
購入単価とは、1回の購入時に顧客1人当たりが支払う総額です。購入単価に近い言葉である「客単価」や「顧客単価」は「顧客」が軸となっており、ユニークな顧客数1人当たりの売上で求められます。
これに対し、購入単価は「購入」が軸となっており、購入1回当たりの売上で求めるものです。
ECサイトを運営する上ではどちらも重要な指標ですが、特に多くの商品点数を扱うBtoCビジネスにおいて、購入単価は売上を向上させるために欠かせない指標といえます。
計算方法
購入単価の計算方法について、「客単価」や「顧客単価」の計算方法との違いに触れながら紹介しましょう。まず購入単価の計算方法は以下の通りです。
ここでは、1カ月の売上が1,000万円、トランザクション(購入)件数が1,000件、ユニーク顧客数が500名のECサイトを例に考えます。この時、購入単価は以下のように計算できます。
購入単価=売上1,000万円÷トランザクション件数1,000件=1万円
なお、客単価・顧客単価は「客単価・購入単価=売上÷ユニーク顧客数」で求められるため、以下のように計算します。
客単価・顧客単価=売上1,000万円÷ユニーク顧客数500名=2万円
他指標との関係
ここでは、ECサイトで他にも重要な指標である売上、LTVについて購入単価との関係性を見ていきます。
売上を求める計算式は、「当月売上=当月購入単価×当月購入件数」です。そのため、購入単価の向上は、売上アップに直結します。
LTV(ライフ・タイム・バリュー/顧客生涯価値)を求める計算式のひとつは、「LTV=購入単価×購買頻度×契約継続期間」です。
この計算式から分かるように、LTVを向上させるにもやはり購入単価の向上が欠かせません。
このように購入単価は他の重要指標と密接な関係にあり、それぞれを高めることが売上の向上につながるため、購入単価も重要なKPIの1つとして考えなければならないのです。
LTVについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
購入単価を向上させるための7つのポイント
購入単価のアップは、ECサイトで売上を向上させるための強力な後押しとなりますが、どうすれば購入単価が向上するのでしょうか。
特に重要なポイントはクロスセルとアップセルです。クロスセルとは、ある商品の購入を検討している顧客に対して、関連する別の商品も薦めて購入点数を増やす販売手法を指します。
一方、アップセルとは、ある商品の購入を検討している顧客に対して、より上位グレードの商品を薦めて転換を狙う販売手法です。
ここではそれらを踏まえて、購入単価をアップさせるための7つの施策を紹介します。
アップセル・クロスセルについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
まとめ買いを促す
単品通販で使える施策です。例えば、掃除機のゴミパックを1セットではなく、2セット以上、コピー用紙を1箱ではなく2箱以上を購入させます。
具体的な方法としては、「2個セットなら10%オフ」、「3個なら30%オフ」といった割引や、「1万円以上の購入でポイント3倍」、「1万円以上の購入で送料無料」といったメリットをアピールするのが効果的です。
ただし、まとめ買いをすることで、購入頻度が減ってしまうと売上は変わらなくなるため、従来とは違う使い方を紹介したり、食品であればアレンジレシピを紹介したりするなど、これまで以上に商品を消費させるための工夫も同時に検討しましょう。
関連商品を提案する
いわゆるクロスセルです。ECサイトで特定の商品ページの下部に、「関連商品はこちら」、「これを購入した方はこちらも購入しています」といった形で別の商品をレコメンドします。
ECモールやカートシステムによっては、無料でレコメンドシステムを使える場合がほとんどです。有料の場合は、費用対効果を考えつつ導入を検討しましょう。
商品数が少ないECサイトであれば、おすすめしたい商品ページへのリンクを設置してもよいでしょう。
上位グレード商品を促す
いわゆるアップセルで、顧客が購入しようとしている、あるいはすでに購入・利用している商品・サービスの上位グレードを薦める施策です。
初回購入者にいきなりアップセルを行うのは難しいため、2回以上の購入経験のある顧客に対し、メールマガジンやSNSを通して薦めるのが良いでしょう。
購入単価を向上させる上で最もシンプルかつ有効な施策と言えます。
付加サービスを拡充させる
送料無料や返品・交換・修理サポートなど、付加サービスを拡充する方法です。オフィス用品のECでは頻繁に使われる手法で、他にも服飾、靴などのECでも行われています。
また、サブスクリプションサービスにおいて、有料プランは広告が入らない仕組みを設けたり、上位ラインナップはサポート体制をさらに充実させたりするなど、アップセルの1つとして行う方法も有効でしょう。
このような施策に成功すれば、アップセルによって購入単価アップにつながります。
費用対効果・価値を伝える
関連商品を提案したり、上位ラインナップを推奨したりしても、それだけですぐに購入してもらえるとは限りません。
クロスセルやアップセルを狙うには、その価値を高めることはもちろん、費用対効果や商品価値を顧客にしっかり伝えることが大切です。
「まとめ買いで割引にする」、「効率的な使い方を紹介する」といった手法で費用対効果をアピールし、コスト面の懸念を解消するのも手段の1つでしょう。
また、「商品の開発ストーリーを伝える」、「商品を使った先の未来がどうなるかを可視化させる」など、商品価値をアピールすることも購入単価のアップにつながります。
ロイヤルティを高める
ロイヤルティとは、顧客が商品・サービスに対して感じている愛着や信頼を指します。
ロイヤルティの高い顧客は、購入頻度が高くて、プロモーションへの感度も良く、購入単価も高い傾向があるため、自社でロイヤルティの高い顧客を育成することは、購入単価の改善に効果的です。
具体的には、「5回以上の購入で新商品の先行販売権をプレゼントする」、「自社のイベントへ招待する」といった施策が挙げられます。
ロイヤリティについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
新規性を打ち出す
クロスセルやアップセルで購入単価アップを目指すためには、顧客にとって目新しさや魅力を訴求するのも重要なポイントです。
新たな商品の使い方を提案したり、キャッチコピーを変えたりすることで興味関心を獲得します。結果として関連商品や上位商品も購入してもらい、購入単価向上につなげていきましょう。
購入単価アップに成功した企業事例
前項で紹介したような施策を実施し、購入単価アップに成功した企業事例を3つ紹介します。
千趣会
大手ECサイト「ベルメゾンネット」を運営する株式会社千趣会。2019年、同社は人気商品の1つであるインナーブランド「サラリスト」シリーズで購入単価アップに取り組みました。
具体的な方法としては、早割に加え、当該シリーズを3点以上購入すると10%オフ、5点以上で15%オフとすることで、まとめ買いを促進したのです。
成功のポイントは、人気商品にさらに改良を重ねて品質を向上させた上、2018年までは割引対象を2点以上としていたものを当年は3点以上としたことです。
これにより、1人当たりの購入点数が増え、前年に比べて大幅な購入単価向上を実現。前年同時期よりも受注拡大に成功し、キャンペーン月の業績は対前年比・計画比ともにアップしました。
ハーバー研究所
無添加にこだわった化粧品、医薬部外品、栄養補助食品などの開発・製造・販売を行っている株式会社ハーバー研究所。
2014年、同社は自社ECサイト「HABA Online Shop」上でクロスセルを図るために、健康食品のカタログを分冊化し、同社が提唱する「スクワラン美容」の案内を徹底しました。
その結果、効果を実感した顧客が増加し、継続率や購入単価の向上に成功したのです。
成功のポイントは、季刊発行のカタログで季節の悩みに合わせた特集を組み、自社商品の使い方を丁寧に説明。その後、その商品を月刊発行のカタログで訴求したことです。
この相乗効果により、自社商品の価値を明確に伝えられたことが、購入単価の向上につながっています。
楽天
日本最大級のネットショッピングモールを運営する楽天株式会社。2018年9月、同社はチャット機能「R―Chat」を全店舗に導入。
商品に対する疑問や店舗に対する要望など、ユーザーと店舗との間でリアルタイムでのやり取りができるようにしました。
導入後は、ユーザーが購入前に疑問や不安をスムーズに解消できるようになり、購入転換率、購入単価ともに2倍という成果を上げています。
成功のポイントは、これまで基本的にメールでしかやり取りができなかった顧客とのやり取りを、リアルタイム化させたことです。
また、ユーザー側も発送日を早めてもらったり丁寧な対応を受けたりする中で、店舗に対して感謝や愛着を感じ、信頼関係を構築しやすくなった点も、購入単価のアップに影響している可能性があります。
購入単価を高めるために役立つツール
購入単価を向上させるには、様々な施策を実践してみることが大切です。しかし、多くのECサイトでは人員不足の問題もあり、すべてを人の手で行うのは難しいのではないでしょうか。
そこで、ここでは購入単価アップに役立ち、なおかつ業務効率化をサポートするツールを紹介します。
顧客情報管理ツール
顧客情報管理ツールとは、顧客属性や購買履歴、購買傾向など顧客との関係を可視化・分析することを目的に、顧客に関するあらゆる情報を管理するツールです。
代表的なものとしては、CRMやMA(マーケティングオートメーション)などが挙げられます。
このツールを使えば、顧客情報や購買記録などを一元管理できるため、購入単価が高いパターンとそうでないパターンの傾向を分析することが容易になります。
このように精度の高い分析ができるようになることで購入単価アップに役立ちます。
A/Bテストツール
A/Bテストとは、デザインなどが異なる2パターンのWebページを用意し、効果を比較検証するもので、これを効率的かつ正確に実施・測定できるのがA/Bテストツールです。
人の手で複数のページを準備するのはかなりの手間がかかる上、効果測定・分析・データ管理も楽ではありません。
しかし、A/Bテストツールを使えば、こういった作業が大幅に効率化され、購入単価が高いパターンの絞り込みがしやすくなります。
Web接客ツール
Web接客ツールとは、ポップアップやチャットボットなどの機能を通じて、サイト訪問者に合わせたオンライン接客を実現するツールです。
画面にポップアップを表示するポップアップ型と、チャットボットで受け答えをするチャットボット型の2パターンがあります。
ユーザーの行動や問い合わせ内容に応じて最適なレコメンドが可能で、関連商品の提案や上位商品への誘導によって購入単価アップに貢献。
特にチャットボットがあれば、ユーザーの問い合わせ対応を自動化できるため、人的リソースが豊富でないECサイトであっても迅速な回答ができ、顧客満足度の向上も見込めます。
チャットボットについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
チャットボットを導入した事例
先ほどの見出しで、購入単価を高めるツールとしてチャットボットを紹介しました。
本見出しでは、実際にECサイトにチャットボットを導入した事例を3つ紹介します。
売り上げが10倍に
株式会社ライブナビ
導入の目的:売上の上昇
導入後の成果:売上が10倍に
獣医師との共同開発を経たのち、満を持して犬のデンタルケア商品「ドクターワンデル」を販売し始めた株式会社ライブナビでしたが、当初は売れ行きが芳しくありませんでした。
しかし、商品ページにチャットボットを設置して、購入の際にそのチャットボットからの情報入力を促したところ、設置から半年で売り上げは10倍に。
情報の入力フォーム途中での離脱は、EC業界での大きな課題のひとつとなっていますが、その課題をチャットボットによる快適な入力体験によって解決した事例と言えるでしょう。
こちらの事例の詳細はこちら↓
CVRが200%改善
株式会社レッドビジョン
導入の目的:カゴ落ちの改善、CVRの改善
導入後の成果:CVRが約200%改善
ヘアケアブランド「マイナチュレ」を販売する株式会社レッドビジョンでは、自社で運営する女性向けECサイトのカート内での離脱率が高いという悩みを抱えていました。
そこでチャットボットを導入し、チャット内で決済まで完結できるようにしたところ、CVRが約200%改善。
購入から決済にいたるまでの手順を面倒だと感じさせない方法として、メッセージアプリのようなインターフェースでやりとりできるチャットボットが有効だと分かります。
本事例に関する詳細にご興味のある方は、こちらの記事をご覧ください↓
CVRが140%改善
株式会社クロコス
導入の目的:CVRの改善
導入後の成果:CVRが140%改善
ハンド美容液「Siro jam(シロジャム)」を展開する株式会社クロコスは、商品LPからのCVRを高めるため、チャットボットを設置しました。
チャットボット内の設問項目の順番を変更したり、画像を活用したビジュアル訴求をしたりするなどの工夫によって、チャットボット導入後のCVRは140%改善。
ただ、チャットボット導入の効果はそれだけにはとどまりませんでした。
チャットボット内での商品の購入後、商品に合わせて別商品や別プランの案内をすることによって、アップセルやクロスセルをすることに成功。
チャットボット内の項目や文言、画像などを柔軟にカスタマイズできる特性を生かした事例となりました。
こちらの事例詳細にご興味ある方は、ぜひ下記の記事をご覧ください↓
まとめ
ECサイトの売上をアップさせるための重要な指標となる購入単価。
本記事では購入単価の重要性や向上施策などを紹介しましたが、最も重要なポイントは、商品の価値を向上させ、顧客の求めるものを求めるタイミングで提供することです。
3つの企業事例でも、まず商品の質を高め、顧客の購入タイミングを逃さない施策を行うという仕組みを整えることで購入単価の向上に成功しています。
購入単価改善に取り組む際は、本記事で紹介した施策やツールなども参考に、自社に合う手法を検討してみてください。