「売上拡大のために何か施策を打ちたいが、何から手を付けたら良いのかわからない」
このような悩みを抱えているなら、顧客単価の分析をおすすめします。
顧客単価は売上に直結する数値であるだけでなく、ECサイトの現状を知るためのさまざまな指標としても活用できるため、知っておくと非常に便利です。
本記事では、
・顧客単価の重要性
・実際の計算方法
・顧客単価を活用した戦略の立て方
・数値改善のための具体的な方法
などについて解説しています。
顧客単価を正しく理解し、サイト運営のさまざまなシーンで役立てましょう。
目次
顧客単価とは
どんなビジネスモデルにおいても、売上を算出するには
客数×顧客単価
という式で計算します。
企業が売上改善を目指すとき、「客数を増やすこと」と「顧客単価を上げること」は不可欠なのです。
顧客単価の定義
顧客単価とは、顧客1人あたりが1回の購買で支払う金額の平均のことです。
マーケティングの場面では、測定の目的に応じて購買のジャンルを絞って算出することもあります。
たとえばファッションサイトにおいて、サイト全体の顧客単価の推移を確認したり、トップスやボトムスなどジャンルごとの顧客単価を算出して比較したりするような使い方です。
また、「1回の購買」という期間の幅を、週、月、年、時間帯などに広げて活用することもあります。
週別の顧客単価の推移を見て売り上げ状況を分析したり、時間帯別の顧客単価を見て顧客行動を予測したりするときに使うことも可能なのです。
顧客単価を知る重要性
顧客単価を知ることは、以下3つの理由から企業にとって非常に重要度が高いと言えます。
1. 客数を上げることが難しくなってきている
2. LTV向上につながる施策が考案できる
3. マーケティングの効果測定に利用できる
どれも健全な企業経営を続けていくためには欠かせないポイントばかりです。それでは順番に見ていきましょう。
1. 客数を上げることが難しくなってきている
売上を構成する要因が、「客数」と「顧客単価」であることは前述の通りです。しかし現在の日本市場では、人口減少や市場の成熟などの要因から、客数を伸ばすことが困難になってきているのです。
マーケティング用語に「1:5の法則」というものがあります。これは、新規顧客獲得にかかる費用は既存顧客維持に価格費用の5倍かかるというものです。つまり客数を増やすことばかりに気を取られてしまうと、広告宣伝にかけるコストが膨らみ企業経営を圧迫してしまう恐れがあるのです。
これではいくら売上が伸びたところで意味がありません。
そのため、効率の良い売上アップ施策として、顧客単価向上の重要性はこれまで以上に高まってきているのです。
2. LTV向上に繋がる施策が考案できる
LTVとは、Life Time Valueの略で日本語に訳すと「顧客生涯価値」、つまり1人の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益のことです。
新規顧客の獲得が困難になってきている状況下で、企業が安定的な成長を続けるためには、既存顧客との関係性の維持も欠かせません。LTVを測定することで、この既存顧客との関係性の強さを知ることが可能なのです。
LTVの算出式は、「顧客単価×購買頻度×継続購入期間」です。そのため顧客単価を把握し、向上の施策を行うことは、LTVの改善にも大きく影響を与えることが可能と言えます。
関連記事:LTV(顧客生涯価値)とは?向上させるための8つの施策とさらなる重要指標
関連記事:LTV分析のメリットとは?算出方法とマーケティング活動に必須のCPA改善方法
3. マーケティングの効果測定に利用できる
顧客単価は、マーケティング戦略の効果測定に利用できます。
たとえば、新規顧客を増やすために「初回利用半額キャンペーン」を行ったとします。このとき、利用した顧客数が多いと一見キャンペーンは成功したかのように見えるでしょう。
しかし、月単位・年単位で顧客単価を計測してみると、実はその後継続して使っている顧客は少なく、顧客単価も低いままだったということが起こり得るのです。
この場合、キャンペーンは成功とは言えず、戦略の練り直しが必要と判断できます。
もし、顧客単価が想定していたより低い場合は、セット販売を行うなどして単価を引き上げるなどの施策が考えられます。
また、安売りをしている目玉商品ばかりが売れている場合は、販売手法や訴求方法について見直しをする必要があるかもしれません。
このようにマーケティングの効果測定を行う場合、より精度の高い分析が可能になるのも、顧客単価を知ることのメリットと言えるのです。
顧客単価の計算方法
では顧客単価はどのようにして算出すればよいでしょうか。
顧客単価の計算式は以下の通りです。
顧客単価=売上÷客数
たとえば、A、B、Cの3人が次のような買い物をしたとします。
顧客 | 購入商品 | 合計金額 |
A | 1,500円のシャツと 3,000円のスカート | 4,500円 |
B | 500円のTシャツ3枚 | 1,500円 |
C | 6,000円の靴 | 6,000円 |
この場合の顧客単価は、
(4,500+1,500+6,000)÷3=4,000(円)
であると分かります。
また、一定期間のリピーターの顧客単価を計算する場合、この方法では同じ顧客が商品を購入するたびに客数とカウントされてしまうので工夫が必要です。
客数を分解すると客数=ユニーク客×来店頻度と表せるので、これを利用して
顧客単価=売上÷(ユニーク客×来店頻度)
という式が考えられます。
顧客単価をエクセルで計算する方法
ECサイトでは、顧客情報が膨大になってしまい、人の手で処理するには時間がかかりすぎてしまう場合もあります。
そのようなときには、エクセルの「SUMIF関数」を利用すると、指定した条件の値だけを集計してくれるので便利です。
スムーズに計算できるよう、日々の売上管理表作成時には「データは縦方向に並べる」「行を開けずに入力する」ことに気を付けておきましょう。
実際の計算方法は以下の通りです。
①顧客リストを作成する
売上管理表をもとに、列に顧客名と金額計をとった表を作ります。この時点で顧客別の表には顧客名しか入っておらず、金額計のセルは空白になっています。
次に知りたい顧客の金額計のセルに「=SUMIF(」と入力します。
②検索範囲を指定する
次に検索したい範囲を指定します。
売上管理表の中の知りたい期間の顧客名を全て選択します。すると、先ほどの「=SUMIF(」の後ろに選択した範囲(たとえば、D4:D30 )が表示されるので、その後ろにカンマを打ちましょう。
このとき、自動入力された範囲に「$D4:$D30」と追加入力するとこれ以降の検索範囲が固定され、ずれる心配がないので便利です。
③検索条件を指定する
最後に検索条件を指定します。
今回の検索条件は売上金額なので、金額が入力されている列の必要な範囲(たとえば、E4:E30)を選択します。この時も先ほどと同様に「$D4:$D30」と範囲を固定しましょう。
すべて入力し終わったら最後に「)」で閉じてエンターキーを押します。すると、知りたい顧客の合計金額が表示されます。
顧客単価を分解し戦略を考える
顧客単価を改善しようと思っても、一体何から始めたら良いのか分からなくなることがあるかもしれません。そんな時には、「顧客単価」を分解してみましょう。
顧客単価を分解すると、
顧客単価=商品単価×購入点数
となります。
「商品単価」「購入点数」の現状から戦略を立てよう
顧客単価向上のためには、先ほどのように「商品単価」と「購入点数」に分解してから現状分析を行うことで、効果的な戦略立案のヒントが見えてくることがあります。
たとえば、競合と比較して自社の商品単価が低い場合はより高額の商品の売り込みに力を入れたり、人気商品に付加価値を付け足したりするなどのリニューアルで適正な価格設定をし直しましょう。
また、購入点数が低い場合は、セット販売やクロスセルなどを行うなど、点数を上げる施策が考えられます。
このように漠然と改善方法を考えるよりも、それぞれの要素にフォーカスすることで、より効果的な戦略を立てられるのです。
顧客単価を設定するポイント
顧客単価を設定する上で注意すべきポイントは、自社で取り扱っている商品の特徴です。
もし、家電や大型家具などを取り扱っているのであれば、商品単価がそのまま顧客単価となるパターンがほとんどでしょう。
この場合は商品単価の設定が非常に大切です。もしも企業が顧客のニーズを無視し、原価と利益だけの計算で商品単価を決めてしまったら、顧客が感じる「値ごろ感」とはかけ離れてしまう恐れがあります。
顧客単価を上げるためには商品自体のスペックを改善したり、新たな付加価値をつけたりするなどして、商品単価に納得感を持たせる工夫をしましょう。
一方、食品や日用品などを扱う企業では、複数点の購入を予測して商品単価×点数で顧客単価を設定します。そのため、より高い顧客単価を設定する場合は、買い上げ点数を伸ばす施策を考えることが重要です。
顧客単価の低下に繋がる要因
顧客単価が下がるとき、何が起きていると考えられるでしょうか。
これまでご紹介してきた計算式から、以下の3つの要因が挙げられます。
1. 客数の減少
2. 購入点数の減少
3. 商品単価の低下
ではひとつずつ見ていきましょう。
1. 客数の減少
客数が減少すると顧客単価は下がります。
前述の通り、現在の日本市場においては新規顧客獲得が困難になっています。そのため、リピーター獲得ができていないと次第に客数が減少してしまう恐れがあります。
インターネットショッピングでは、顧客は実店舗を回るよりも手軽にさまざまなECサイトを行き来できます。客数を安定させるには、リピーター確保の仕組み作りを確立させることが大切です。
また、競合サイトでセールを行っている場合にも、一時的に顧客がそちらに流出してしまい客数が減少することがあります。ストアロイヤリティを向上させ、簡単に顧客が他サイトへ流出してしまうことを防ぎましょう。
2. 購入点数の減少
購入点数の減少も顧客単価の低下に繋がります。
たとえば何の戦略もなしに商品単価の値上げをしてしまうと、顧客は「前は安く買えたからまとめて買っていたけど、とりあえず1個にしておこう」などと考え、買い控えることがあるので購入点数は減少します。
また、セールの目玉にするために毎回値下げする商品を固定する方法は多くのサイトで見られる手法ですが、むやみに値下げする品目を増やしてしまうのも問題です。
顧客は「次のセールまで待てばどうせ安く買えるから、今回はあまり買い物をしないでおこう」と考えるようになるので、特定の期間以外の購入点数が下がってしまうからです。
値上げや値下げを行う場合は、顧客が納得できる理由を理解してもらうことが大切です。原料の高騰などどうにもできない原因であったり、新たな付加価値をつけるなどして、価格を変えても購入点数に影響を与えないよう工夫しましょう。
3. 商品単価の低下
商品単価の低下も顧客単価に影響を与えます。
たとえば、客数や客単価を伸ばそうとして安価な商品を商品ラインに導入した場合を考えてみましょう。
すると、これまで主力商品として売れていた商品から安価な商品に顧客人気が移ってしまい、逆に顧客単価自体も下がってしまうことがあるのです。
このように戦略なく安易に安い商品を提供しても、それが売上改善に繋がるとは限らないのです。
顧客単価を上げるためには、自社や顧客の状況を見極め、適切な施策を講じることが大切なのです。
顧客単価を上げる7つの提案
では、顧客単価を上げるために、どのような施策が挙げられるでしょうか。
ここでは7つの具体的な方法を提案しています。
それでは順番に見ていきましょう。
1. 商品単価を上げる
商品単価を上げることは、最もシンプルな顧客単価改善方法です。
しかし、ここまででも説明したように戦略のないむやみな値上げは、顧客の買い控えやリピーター離れの原因になってしまいます。
顧客単価を上げるためには、納得感のある理由を伴った商品単価の値上げを行う必要があります。
2. セット販売する
コンセプトを持ったセットを作って販売することで、顧客単価を上げる手法です。
たとえばベーカリーメーカーを販売する場合、パン作りには欠かせない強力粉や、ドライイーストなどをセットにして売られているのを見たことはありませんか?
これは、顧客の買い回りの手間を軽減するだけでなく、顧客単価を上げるための施策でもあるのです。
また、「3点以上お買い上げで30%オフ」や「1,000円以上のお買い上げで送料無料」という販売方法も、同じくあと一歩購入を決めかねている顧客の後押しができる手法です。
まとめて買うことで、1点あたりの単価を安く済ませたい顧客側のメリットと、顧客単価を上げたい企業の狙いを両立させて実現できる効果的な方法と言えます。
3. アップセル
アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品よりもさらに高額な上位商品をおすすめすることです。
携帯電話の機種変更で、現在と同等の機種を買い求めようとしている顧客に、店員が新機能が搭載された最新機種を勧める場面を想像すると分かりやすいかもしれません。
顧客はすでに商品の価値をある程度理解している上に購入意欲があるので、アップセルを行うことで効率よく顧客単価を上げることが可能です。
しかし、ニーズを考えない一方的な押し売りになってしまうと顧客に不信感を与えるだけでなく、最悪の場合顧客離れの原因にもなってしまいます。
アップセルを行うときは事前のリサーチをしっかりと行い、おすすめする商品の価値が顧客に伝わるよう工夫しましょう。
関連記事:アップセルとは?手法や成功ポイントと便利ツールを紹介
4. クロスセル
クロスセルとは、顧客が購入しようとしている商品の関連商品を一緒におすすめして、顧客単価を向上させる手法です。
ECサイトなどで買い物をしているとき、「この商品を購入した方はこちらも一緒に購入しています」など複数の商品をおすすめされた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
子どものおもちゃを購入した顧客には乾電池や収納ケース、ハンドクリームを購入した顧客には同じシリーズのリップクリームなどを勧めて購入点数を増やすことで、顧客単価を引き上げます。
ただしアップセル同様、一方的な押し売りは顧客離れに繋がることもあるので、おすすめするときはさりげなく顧客のニーズに訴えるようにしましょう。
関連記事:クロスセルとは?手法や実践ステップ、施策事例や便利ツールを紹介
5. 3段階の価格設定を行う
スーパーで買い物をしていると、たとえば精肉売り場や総菜売り場などで同じ商品が並んでいた場合に、サイズが小・中・大のものが売られているのを見たことはありませんか?
よく見てみると多くの場合、中パックの陳列量が最も多いことに気づくと思います。つまり、中サイズのものが一番よく購入されるということです。
この現象を、マーケティング業界では「松竹梅の法則」と言います。
もちろん、家族構成や年齢などの要因から中サイズが選ばれやすいということもありますが、人は3つの価格帯のものを見せられた時は中程度の価格のものを最も選びやすいという傾向があるのです。
安価な商品と高額の商品の2パターンしか用意しなかった場合には、顧客はどうしても安価な商品を選びがちです。その結果、客数は多いのに商品単価が上がらず、顧客単価が改善できないという状況に陥ってしまいます。
この現象を利用して、最も主力としたい商品を売り込むときには同じジャンルで価格が安いものと高いものを並べて比較できるようにすると、最も安価な価格帯の商品より少し高額商品が売れるようになります。このようにすることで、意図的に商品単価、顧客単価を上げられるのです。
6. ロイヤリティプログラムを充実させる
ロイヤリティプログラムとは、リピーターのみを優遇するためのメニューのことです。限定セールやクーポンの配布、ポイントアッププログラムなど、利用したことがある方も多いのではないでしょうか。
これらのプログラムを提供することで、リピーターのロイヤリティを向上させることが可能です。何度も繰り返し購入してもらえると、一定期間における顧客単価が上昇します。
関連記事:顧客ロイヤリティとは?メリット・調査法・向上の施策事例を解説
関連記事:ロイヤルカスタマーとは?分析や育成の方法、役立ちツールを紹介
7. クレジット決済に対応させる
オンライン決済が主流になりつつある現在において、クレジット決済に対応することは顧客単価を上げる施策としても重要です。
たとえば、ブランド物や家電などの高額商品を購入するのには、現金を扱わずに買い物が完了するクレジット決済は欠かせません。
また、毎月の定期購入が基本となるサブスクリプションビジネスも、クレジット決済ができると毎回の支払いの手間がかからないので便利です。
顧客単価のデータを何に活かすのか
顧客単価は売上分析のための指標としてだけではなく、そのほかのビジネスシーンにおいても活用できる数値です。
たとえば、新規顧客獲得キャンペーンを行う場合の価格設定を適正にし、キャンペーン効果の最大化を目指すことが可能です。
既存顧客の顧客単価が分かっていれば、新規顧客が「この価格なら試してみたい」と感じる価格がどのくらいであるか、およその目安として活用できます。
また、既存顧客のデータを属性ごとに分類してみると、どの層にもっとも高頻度で利用されているのかが分かります。その結果をもとに、新規キャンペーンの方向性を決めるのもよいでしょう。
たとえば、最も購入金額が多い層に向けてアプローチするのか、現在は潜在層となっている顧客のニーズを発掘する仕組みを考えるかなど、キャンペーンの方向性を事前に決めておくことで、より高い効果を上げることが可能になります。
さらに顧客満足度を測る指標としても、顧客単価を活用できます。
この場合、ある地点の顧客単価と一定期間の顧客単価を利用すると、よりはっきりとした度合いを測ることが可能になります。
もし、一定期間の顧客単価の方が明らかに伸びている場合、顧客は商品に満足し何度も利用したいと思ってくれていることの現れと理解できます。
顧客満足度は、LTVの改善にも大きく影響します。企業の安定的な成長のためにも定期的に活用し、顧客満足度の向上を目指しましょう。
まとめ
顧客単価は分析結果を売上向上に活かせるだけでなく、LTVや顧客満足度を測る指標として利用したり、マーケティングの効果測定に使えたりと、ECサイトを運営する上では欠かせない数値です。
顧客単価を上げる施策はさまざまですが、ただ闇雲に着手するだけでは効果が上がりません。特に強引なアップセルやクロスセルは、顧客の不信感を煽り顧客離れの原因にもなりかねません。
正しく顧客単価を分析・理解し、活用していきましょう。
LTV・顧客単価の向上なら「BOTCHAN Payment」
BOTCHAN Payment を利用すると、クレジットカード決済に対応したチャットボットが顧客を決済までスムーズに導いてくれます。
また、チャット内で自然な形のアップセルが可能なので、顧客にストレスを感じさせることなく顧客単価を上げ、LTV改善につなげることが可能です。