ECサイトの分析は、パフォーマンス改善と運営の成功のために必要不可欠な要素です。分析の効果や改善策の質を上げるには、目的を持って行う必要があります。
また、より効果的にサイトを分析し、改善につなげるためには、主要な指標(KPI)を知っておくことも大切です。
本記事では、ECサイトを分析する手法の軸となるステップや11のKPIを解説するとともに、分析・改善の際に意識すべき考え方やツールも紹介します。
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目次
ECサイトを分析する際のステップ
ECサイトの分析は、目的設定、分析、施策立案という3つのステップで行います。このうち分析のステップは、「横軸」と「時系列」の2つの角度から行います。それぞれ順番に解説します。
KPIを設定する
まずは重要指標であるKPIを設定します。自社のECサイトにおいて「何を確かめたいのか」という目的に応じて、「どのような指標に注目するのか」を設定します。
例えば、分析を行うことで売上を高めたい場合、売上やユーザー数、CVRなど、売上に関連する指標を洗い出します。
ECサイトには、分析の対象となるポイントが膨大にありますが、目的を決めることで、どのポイントを重点的に分析すべきなのか、見極めることができます。
横軸で分析する
横軸の分析とは、類似サイトや競合サイト、関連サイトなど、同じような業種・業態・商材を扱うECサイトと比較することです。
比較によって自社のECサイトの強みや弱みが分かれば、指標改善のための問題点を把握しやすくなります。同時に、ライバルに対して優位に立つための施策を導き出すことにもつながります。
時系列で分析する
もう1つの分析手法は、過去から現在に至るまでの変化を時系列順で分析することです。このとき、基本的には前年同時期と比較します。
特にある季節しか売れない商材などの場合、前月比較などはあまり意味がありません。
時系列分析によって、現在は成長フェーズなのか、成熟フェーズなのかが把握できれば、フェーズに合う施策を打ちやすくなります。
改善施策を導き出す
分析結果から改善すべきポイントを把握し、そのための施策を導き出すのが最後のステップです。既存顧客にダイレクトメールを送る、Web広告を活用するなどの施策を立案し、実行に移します。
施策がいくつかある場合、費用対効果の高いものから試すのも1つの手段です。
施策結果をさらに検証するPDCA(「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Action(改善)」)のサイクルを回すことで、ECサイトを成長させることができます。
ECサイト分析で注目すべき11のKPI
ECサイト分析ではKPIの設定が重要であることを解説しましたが、具体的にどのような指標に注目すればよいのでしょうか。ECサイト分析で活用すべき11のKPI(重要指標)を紹介します。
売上・利益
1つ目の重要指標は売上・利益です。売上は、サイトの規模を端的に示す重要な指標です。1日、1週間、1カ月、四半期、1年など多くの単位でモニタリングでき、管理しやすいKPIです。
売上は「売上高=セッション数×CVR×購入単価」という要素で構成されており、分解して考えるのも効果的です。また、売上だけでなく手元に残る利益も重要です。
売上が上がっても経費がかさめば利益は減ってしまうため、コストに関するKPIにも注目しましょう。
セッション数
セッション数とは、ユーザーがサイト訪問した回数のことで「訪問数」とも呼びます。
関連して重要な指標に、同じ人が何度訪れた場合でも1人と計算する「訪問者数(ユニークユーザー数)」やページが表示された回数を意味する「PV数」、これらを総称した意味合いを持つ「アクセス数」があります。
これらの数値は、ECサイトがどれほど集客できているのかを示す上で重要なKPIです。また集客力だけでなく、サイトの認知度を測るのに便利なKPIでもあります。
CVR
CVRとは「Conversion Rate(コンバージョン率)」の略称です。ECサイトの訪問数のうち、実際に商品・サービスを購入した人の割合を示します。
CVRの計算方法は以上の通りです。CVRが高いECサイトは、ターゲット設定が正しく、訪問者にとって良い商品を揃え、魅力的な訴求ができている状態であると言えます。
逆に来訪者数が多いのにCVRが低い場合、サイト構造の改善を行うなど数値を改善するための施策を打つ必要があります。
CVRについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
LTV
LTV(顧客生涯価値)とは「Life Time Value(ライフタイムバリュー)」の略称で、顧客が一生を通じてその企業に対してもたらす利益のことを指します。
LTVが高い状態とは、顧客の自社に対するロイヤリティ(愛着、信頼)が高く、その結果として顧客1人当たりの利益貢献が大きい状態です。LTVは以下の式を使うことで求めることができます。
単品リピート通販など継続性のある商品・サービスを扱うビジネスモデルにおいては、LTVを高め利益を出しやすい構造にすることが必須です。
LTVについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
購入単価
購入単価とは、商品・サービスの購買1回当たりの売上金額のことです。購入単価が高ければ、1回の購入を効率的に売上に結びつけられていると言えます。購入単価をの求め方は以下の通りです。
購入単価を上げる代表的な手法としては、関連商品を薦めてまとめて買ってもらうクロスセルや、よりランクが上の商品を薦めて買ってもらうアップセルなどが挙げられます。
購入単価について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
離脱率
離脱率とは、あるページを含む全てのセッションのうち、そのページがセッションの最後のページになった割合を表す指標です。
つまり、サイトのどのページからユーザーがサイトを離れてしまったのかを示します。離脱率の求め方は以下の通りです。
離脱率が高いページ、低いページの傾向を分析し、CVにつながるパターンとそうでないパターンが分かれば、効果的な改善施策につなげることができます。
離脱率について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
直帰率
直帰率とは、サイトのセッション数(訪問数)のうち、1ページのみで直帰した割合を表す指標です。
直帰率は以下のように計算します。
つまり、サイトに訪れたものの、サイト内で1ページしか見ずにそのままサイトから離れたユーザーがどれだけいたのかを示します。
直帰率が高い場合、サイトのターゲティングやLP(ランディングページ)に問題を抱えている可能性があり、改善のために対策が必要です。
特にページの改修後や広告の変更後に直帰率が上昇したような場合では、早急な対応が必要です。
直帰率について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
リピート率
リピート率とは、今までに商品を購入したことのある顧客のうち、リピート購入した顧客の割合を示す指標です。リピート率は、以下の式を用いて求めることができます。
リピート率の高さには、一度購入した顧客が「商品やサービスに満足した」あるいは「また購入したいと思った」ことが表れていると言えます。
特に単品リピート通販事業など、収益基盤を確保するためにリピート化、ファン化といった囲い込みが欠かせない業態では、最も重要な指標です。
リピート率について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
CPA
CPAとは、1件のCV獲得にかかるコストのことで「顧客獲得単価」とも呼ばれます。CPAは、以下の式を用いることによって求められます。
ECサイトの運営では顧客獲得、売上増のために広告を出稿することが多いですが、広告を出して売上につなげることができても、コストが高ければ利益が圧迫されてしまいます。
そこでCPAに注目することで、どの程度の顧客単価でCVを獲得できたか判断することができ、コスト管理が可能になります。
CPAについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
ROAS
ROASもCPAと同じく、広告運用の成果を測る指標の1つです。ROASは、広告費に対してどれだけの売上を達成できたのかを表します。
ROASは以上の式を使うことで求められます。投資した広告費用の回収率を示し、出稿した広告が売上に貢献しているのかどうか、シンプルに広告効果が分かります。
ただし、ROASでは、利益が出ているかどうかを知ることはできない点に注意が必要です。
ROASについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
ROI
投資に対する成果を測る際に用いられるもう1つの指標が、ROIです。ROIとは、広告費など投資したコストに対する利益効果を測る指標のことです。
ROIは以上の式を用いることで求められます。つまり、利益を投資コストで割ることによって算出できます。
ROIは、ECサイトの採算性や広告効果などを利益ベースで測れるため、業績判断に役立つ指標です。
ECサイトの分析・改善でカギになる2つの考え方
ECサイト分析では、指標に沿った分析を経て、改善施策を導き出すことになりますが、その際に意識しておきたいポイントが2つあります。
それは「収益」と「コスト」です。それぞれ詳しく解説します。
収益を最大化する
ECサイト分析においては、第一に収益の最大化を意識しなくてはなりません。収益アップの障壁となっている要因を分析し、改善するための施策を練ります。
例えば「利益=セッション数×CVR×購入単価×利益率」なので、1つひとつの要素まで分解し、どの数字に課題があるのかを見極めます。
CVRの数字に課題があればサイト構造を見直してみる、購入単価を上げるためにクロスセルを行うといったように、改善ポイントを探すことが大切です。
コストを最適化する
もう1つ意識すべきなのは、コストの最適化です。利益を増やすため、売上を高めることだけに意識が向きがちですが、同時にコスト配分を最適化し、コストをかけるべきところとあまりかけないところを調整することが大切です。
投資したコストに対する成果を見るには、ROIやROASといった指標が役立ちます。これらの指標を用いて、プロモーションや仕入れなどについても見直し、費用効果を高める施策を打つべきです。
ECサイト分析と改善施策に欠かせないツール
ECサイト分析と改善施策の立案に役立つツールを紹介します。目的に合わせてツールを活用することで、効果的なECサイト分析を行うことができます。
アクセス解析ツール
アクセス解析ツールとは、Webサイトへアクセスしている訪問者の傾向や行動をチェックできるツールのことです。
具体的には、訪問者のユーザー属性(性別や年齢)、使用デバイス、よく見られているサイト内のページ、多く離脱されるページ、CVなどの記録を管理・分析することができます。
「Google Analytics(グーグルアナリティクス)」が代表的です。
アクセス解析ツールを活用すれば、ECサイト上のさまざまなデータの測定・可視化が可能になるため、効率的かつ効果的な分析ができるようになります。
顧客情報管理ツール
顧客情報管理ツールとは、顧客属性や購買履歴、購買傾向など、顧客に関するあらゆる情報を管理するツールのことです。
見込み客へのアプローチを目的としたMA(マーケティングオートメーション)や、既存顧客の管理が主となるCRMなどが代表的な顧客情報管理ツールです。
ECサイトと顧客に関するデータを一元管理できることで、成果が出ているパターンの分析がスムーズに行えます。顧客の行動の分析は、LTVや購入単価、リピート率の向上に役立ちます。
A/Bテストツール
A/Bテストツールとは、デザインなどが異なる2パターンのWebページを用意して、効果を比較検証するA/Bテストの実施に役立つツールです。
効果の測定、分析、データ管理などを行うことができます。手動で行うよりも効率的かつ高精度に、テストと効果の検証が実施できます。
ツールを活用しテストを繰り返すことで、よりCVRの高いECサイトへと改善することも可能です。
Web接客ツール
Web接客ツールとは、ポップアップやチャットボットなどの機能を通じて、サイト訪問者に合わせたオンライン接客を実現するツールです。
ユーザーの行動や問い合わせ内容に応じて、スピーディーかつ最適な回答・レコメンドをすることで、CVRの改善が期待できます。
また、データを蓄積することもできるので、例えばチャットのログからユーザーの関心や疑問を分析すれば、改善施策の立案にも役立てることができます。
チャットボットについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
ECサイトにチャットボットを導入した事例
先ほどの見出しで、ECサイトの改善施策ツールとしてチャットボットを紹介しました。
本見出しでは、実際にECサイトにチャットボットを導入した事例を3つ紹介します。
売り上げが10倍に
株式会社ライブナビ
導入の目的:売上の上昇
導入後の成果:売上が10倍に
獣医師との共同開発を経たのち、満を持して犬のデンタルケア商品「ドクターワンデル」を販売し始めた株式会社ライブナビでしたが、当初は売れ行きが芳しくありませんでした。
しかし、商品ページにチャットボットを設置して、購入の際にそのチャットボットからの情報入力を促したところ、設置から半年で売り上げは10倍に。
情報の入力フォーム途中での離脱は、EC業界での大きな課題のひとつとなっていますが、その課題をチャットボットによる快適な入力体験によって解決した事例と言えるでしょう。
こちらの事例の詳細はこちら↓
CVRが200%改善
株式会社レッドビジョン
導入の目的:カゴ落ちの改善、CVRの改善
導入後の成果:CVRが約200%改善
ヘアケアブランド「マイナチュレ」を販売する株式会社レッドビジョンでは、自社で運営する女性向けECサイトのカート内での離脱率が高いという悩みを抱えていました。
そこでチャットボットを導入し、チャット内で決済まで完結できるようにしたところ、CVRが約200%改善。
購入から決済にいたるまでの手順を面倒だと感じさせない方法として、メッセージアプリのようなインターフェースでやりとりできるチャットボットが有効だと分かります。
本事例に関する詳細にご興味のある方は、こちらの記事をご覧ください↓
CVRが140%改善
株式会社クロコス
導入の目的:CVRの改善
導入後の成果:CVRが140%改善
ハンド美容液「Siro jam(シロジャム)」を展開する株式会社クロコスは、商品LPからのCVRを高めるため、チャットボットを設置しました。
チャットボット内の設問項目の順番を変更したり、画像を活用したビジュアル訴求をしたりするなどの工夫によって、チャットボット導入後のCVRは140%改善。
ただ、チャットボット導入の効果はそれだけにはとどまりませんでした。
チャットボット内での商品の購入後、商品に合わせて別商品や別プランの案内をすることによって、アップセルやクロスセルをすることに成功。
チャットボット内の項目や文言、画像などを柔軟にカスタマイズできる特性を生かした事例となりました。
こちらの事例詳細にご興味ある方は、ぜひ下記の記事をご覧ください↓
チャットボットの導入事例について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
まとめ
ECサイト分析は、目的を持って行うことが重要です。目的が定まっていれば、様々な重要指標の中から、何に着目すべきかが見えてきます。
指標を活用し、自社のECサイトの強みや弱み、フェーズ、改善すべきポイントが把握できれば、改善施策の立案もスムーズに行えます。
分析と施策の立案を行う際は、収益の最大化とコストの最適化を意識しましょう。目的に合わせたツールを活用すれば、さらに効果的なECサイト分析が可能になります。
この記事の中で、ECサイトの改善施策に役立つツールとしてチャットボットを紹介しました。
しかし、実際のところ、
チャットボットの導入効果はあるのだろうか…?
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