
ここ最近、様々なシーンで見かけるようになった「チャットボット」。会話形式で質問に答えたり、ユーザーが必要とするページへ案内したりする機能を持ち、ビジネスツールとして注目を集めています。
この記事では、チャットボットのメリットを解説、また導入時に気をつけておきたいポイントについてまとめました。そして最後には、企業が実際にチャットボットを活用している実例をご紹介します。
チャットボットとは?
チャットボットとは、ユーザーがテキストや音声を入力してロボットと対話する自動会話プログラムを指します。
「会話」を意味する「チャット」と、「ロボット」を組み合わせた言葉で、簡単な仕組みのものはインターネット黎明期から存在していました。現在ではLINEやFacebookといったSNSにも組み込まれ、より身近なものになっています。
チャットボットは、ユーザーが入力した言葉やテキストを解析し、それに対して自動で返答する機能を持っています。
そのためカスタマーサービスやECサイト、バックオフィスといったさまざまな場面で業務の自動化・円滑化が実現可能です。
チャットボットの種類
チャットボットには大きく分けて4種類あり、「人工知能の有無」と「導入する目的」によって次のように分類されています。この中から自身の目的にマッチするタイプを選択することが重要です。
- 人工知能アリ×問い合わせ対応型
- 人工知能アリ×マーケティング型
- 人工知能ナシ×問い合わせ対応型
- 人工知能ナシ×マーケティング型
それぞれの種類の詳細は別記事で解説しています。興味のある方はこちらの記事もあわせてお読みください。
参考:チャットボットの4つの種類とは?仕組みと選び方を解説
チャットボットの導入による2つのメリット
まずはチャットボットを導入する2つのメリットを解説します。具体的なメリットの全体像を把握し、チャットボットが自社の商材に適しているかどうかを判断しましょう。
CVR向上による売上アップ
チャットボットで顧客満足度を高めると、売上アップにつながります。
例えば「赤いTシャツが欲しい」という目的を持ってECサイトを訪れたユーザーには、「赤いTシャツの販売ページにたどり着けない」、「そもそも商品ラインナップに赤いTシャツがあるか分からない」という潜在的な悩みが存在します。
そこでサイトに設置したチャットボットに「赤いTシャツが欲しい」と入力してもらうことで、直接商品ページへと案内し、ユーザーの満足度を高めることができるのです。
ユーザーの中には、実際の人に電話で問い合わせをするのは「わずらわしい」、「心理的ハードルが高い」と感じる人も少なくありません。
ユーザー側からすると、相手がロボットだからこそ気楽に質問できるうえ、解決までがスピーディーです。またスマートフォンで慣れ親しんだチャット型のUIは、「利用しやすさ」や「迅速性」に大きく寄与します。
業務の効率化によるコスト削減
チャットボットを導入すると、人間が担当している業務の一部、場合によってはすべて自動化することが可能です。
次々と寄せられる単純な質問にチャットボットが対応することで、業務の効率アップを見込めます。
これはスタッフの負担軽減につながるだけでなく、コールセンターの縮小や人数削減といった人的コストのカットにもつながります。
さらにチャットボットは曜日や時間帯にかかわらず24時間365日稼働でき、休息も必要ありません。
簡単な問いかけなら人間よりも迅速に返答可能で、ユーザーにとっても「休日や夜間でも質問できる」、「問い合わせにかかる時間を短縮できる」というメリットがあります。
チャットボット導入の際の3つの注意点
ここまではチャットボットの導入による2つのメリットを解説してきましたが、ここからは導入時の3つの注意点について解説します。
導入コストや運用の手間が発生する
チャットボットを導入すると「初期費用」、「月額の利用料」、「運用にかかる人件費」などのコストが発生します。
そのためコストに見合ったメリットや成果が得られるように選定・運用することが重要です。導入により削減できるコストや増加する売上に関して、事前に試算をしておきましょう。
導入にかかる費用は規模によってさまざまですが、人工知能を搭載しているタイプは高額です。
さらにカスタマイズをしたり、オプション機能を利用したりすると、その分コストはかさんでいきます。導入後のメンテナンスも成功の鍵を握るので、導入コストと運営コストの両方を見定めましょう。
導入までに時間がかかる
チャットボットは申し込めば即座に使えるというものではありません。プログラム自体はすぐに導入できても、中身を準備する必要があるからです。
内容が充実しないまま実装すると、ユーザーが質問をしても「分かりません」といった返答ばかりになり、顧客満足度の低下を招きかねません。
例えば、ユーザーに選択肢を選んでもらう「シナリオ型」なら、問いかけの切り口や分岐ごとの道のりを整える必要があります。
ユーザーからの質問に答えたり、Webサイト内の別ページへ案内したりするのであれば、FAQの充実と情報整理が必須です。
さらに問題が起こったときに対応できる担当者の選定も忘れてはいけません。実装して公開する前に、ある程度の準備が必要なことを踏まえておきましょう。
回答できないことがある
チャットボットは何でも答えられるものではなく、ユーザーから投げかけられる質問に回答できないこともあります。
質問の意味が理解できないときや、適切な回答データがない場合は、「分かりません」、「回答が見つかりません」といった反応を返します。
そのため、問い合わせをすべて自動化するのは難しく、細かいニュアンスを聞き取りながらコミュニケーションを取って回答できるオペレーターの存在を欠かすことはできません。
チャットボットの精度を上げていけば答えられない質問は少しずつ減っていきますが、簡単な質問にはチャットボットが、複雑な質問には人間のオペレーターが回答するといった役割分担での運用も想定しましょう。
チャットボットの種類とメリット
チャットボットを導入しコスト以上のメリットを得るには、目的にマッチするタイプを選ぶことが大切です。ここではそれぞれの目的に対してどんなチャットボットが適しているのかを解説します。
目的が「売上アップ」の場合
売上をアップさせる方法は多岐にわたるため、まずはチャットボットでどういうサポートをすれば購入につながるかを分析しましょう。
入力フォームで脱落するユーザーが多いのであれば、導入すべきは「人工知能ナシ×マーケティング」型です。
インターフェースをフォームからチャットボットに変えることで、購入や問い合わせアップにつなげられます。
LINEをはじめとするメッセージアプリの普及により、チャット形式に親しみを持つユーザーは少なくありません。
また、多彩な選択肢の中からユーザーのニーズや好みに合った商品をおすすめして購入率を上げるのであれば、「人工知能アリ×マーケティング」型が適しています。
ユーザーの疑問を解消して売上につなげるなら、人工知能の有無を問わず「問い合わせ対応」型です。
目的が「業務の効率化」の場合
業務の効率を図りたいときは、問い合わせへの対応を一部自動化しましょう。これにマッチするのは、人工知能の有無を問わず「問い合わせ対応」型のチャットボットです。
「送料を知りたい」、「資料請求したい」といったシンプルな問い合わせはチャットボットで完結させ、チャットボットが答えられない質問のみオペレーターに回す仕組みを整えれば、必然的に業務の効率が上がります。
目的が「問い合わせ内容の可視化」の場合
問い合わせ内容の可視化が目的の際は、まず蓄積したデータから何を知りたいのかを考えなくてはいけません。
チャットボットとのやり取りでユーザーがどこで離脱するのかを知りたいのであれば「マーケティング」型が適しています。
離脱率の改善には、設問の順番を変える、設問項目そのものを変更するなどの対策が有効です。
問い合わせ内容からユーザーの興味・関心や疑問を知りたいときは「問い合わせ対応」型です。
例えば送料についての問い合わせが多いのなら、現状では送料のページが見つけづらい、表記が分かりにくいといった問題を抱えている可能性ががあります。
チャットボットのメリットを活かした実例
では、実際にどういった企業がチャットボットを導入しているのでしょうか。チャットボットの活用事例をご紹介します。
ユニクロ
チャットボットを活用しやすいのが、膨大な数の商品を販売するECサイトです。アパレル大手のユニクロでは、チャットボットによる買い物アシスト機能「ユニクロIQ」を導入。
例えば「デート」と入力すればデートにおすすめのコーディネートを紹介してくれるなど、優秀で便利なアシスタントとして機能します。
さらに気になったアイテムを選ぶと、近くの店舗の在庫状況や関連するコーディネートまで見ることができます。
Payme
金融業界での導入事例をみてみましょう。Paymeは、法人向けに給与の前払いサービスを提供する企業です。
ランディングページ(LP)やトップページにチャットボットを設置することにより、資料請求や問い合わせへのハードルを下げています。
金融業界というと堅いイメージがありますが、PaymeのWebサイトは非常にフレンドリーなデザインで、チャットボットの存在も違和感がありません。
Parame(パラミー)
チャットボットは、Webを通じてさまざまなソフトウェアを提供するSaaS業界でも活用されています。
Parameは、採用人事向けにオンラインリファレンスチェックを提供するサービスです。リファレンスチェックとは、採用候補者の人格や実績について当人をよく知る第三者に確認することを指します。
外資系企業の採用人事では積極的に行われていますが、日本ではまだあまりなじみのないサービスです。そのため、チャットボットで対応窓口を広げることが、顧客の獲得や成約に貢献します。
チャットボット導入企業が気をつける4つのポイント
チャットボットを初めて導入する際は、大切なポイントをあらかじめ把握しておくとスムーズです。導入時に気をつけたい4つのポイントについて解説します。
導入目的の明確化
チャットボットを導入する前に、その目的をはっきりさせておきましょう。そのためには、現状でどのような問題があり、それに対してチャットボットがどんな形で貢献するのかを明確にする必要があります。
例えば「 問い合わせの数が多く一部を自動化したい」といったことです。目的が明確になると、どのような運用体制が必要なのかがおのずと見えてきます。
運用担当の決定
チャットボットは常に更新しながら運用していくものです。サービスの内容が変更になれば、その都度反映させ、最新の情報に基づいて回答できるようにしておかなければなりません。
そのためには社内情報の共有も必要となってくるでしょう。さらに、質問の回答率を上げ顧客対応の品質を高めるには、チャットボットに対する教育が重要で、メンテナンスをしながら育てていける人材が必須です。
チャットボットと問い合わせ機能の併用
これまでにもご紹介した通りチャットボットは万能ではなく、あくまでも一部の業務を自動化できるプログラムです。
ユーザーが回答を得られないケースが必ず出てくるため、電話やメールフォームによる問い合わせと併用するのが望ましいと言えます。
チャットボットの効果を測定する
チャットボットを導入したら、どの程度効果があったかを定期的に測定しましょう。
チャットボットの種類を問わず必ず確認したいのは「回答率」、「解決率」、「チャットボット経由のCV数」などです。
回答率と解決率は顧客満足度や利用率に直結するため、状況に応じた改善策を講じるようにします。
チャットボットのメリット・デメリットを理解し運用していきましょう
チャットボットは、売上アップや業務効率化、問い合わせデータの蓄積などビジネスに幅広く貢献できるツールです。
自身の商材に合うタイプを見定め、メリットを最大限に生かせる運用を目指しましょう。